話の肖像画

パティシエ・鎧塚俊彦(55)(11)川島なお美さんとの思い出

女房・川島なお美さんと。いつも夫を陰から見守り、支えようとしてくれた
女房・川島なお美さんと。いつも夫を陰から見守り、支えようとしてくれた

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《女優、川島なお美さんと平成21年に結婚した》

女房と出会ったのはテレビ番組です。なれそめというほどの話でもないんです。番組でスイーツ対決をしたときの審査員が女房でした。後日、番組のプロデューサーを通じて、「川島さんがフィギュアスケーターの荒川静香さんの誕生日祝いをやるので、ケーキを作ってほしい。もし、よければそのケーキを持ってきてもらいたい」との依頼を受けました。バースデーケーキだというので、花束を持っていきました。家の前に着いたらここに電話してください、と言われ、電話番号を渡されていたので、「着きました」と電話したら、自然と女房と連絡先を交換する形になって。で、それからですね。

《結婚直後に失明の危機に見舞われた夫に、「この服にはこの眼帯が似合うわよ」とおしゃれを提案する、太陽のように明るく華やかな「女房」。しかし実際は陰から夫を支えるタイプだったという》

女房は必要以上に僕の仕事に口を出すのはいけない、と思っていたみたいです。それでも僕が今、何に向かって準備をしているのかは、いつもそばで、じっと見ていてくれました。

病院の診察室にいつの間にか女房がいたこともあったと話しましたが、知らないうちに、「僕のために」と女房がしようとしてくれたことは、ほかにもありました。

これは女房が亡くなってから僕が知った話です。僕のおじいちゃんは家具職人だったんですが、女房が僕の知らないうちにおじいちゃんが作った家具を探し当てて、持ち主の方に「譲ってほしい」とお願いしていてくれたことがあったそうなんです。断られたらしいんですが、どうやって調べたのか。

一方で、「ええーっ」と思うようなこともありましたよ。友人がチャリティーオークションをやるというので、ゴルフクラブの名品の競りに僕も参加したんです。ゴルフクラブなんて欲しくないから、「落札したらどうしよう」という心境です。ある程度、競り合った後で別の方が落札されて、ほっとしました。ところが、です。後日、そのゴルフクラブが家にあるんですよ。「どうしたの、これ」と女房に聞いたら、「あなたが欲しかったみたいだから、頼んで譲ってもらったの」って。「いらない」とは言えませんから、「ありがとう」と言いました。女房の情の深さにはほんとうに頭が下がる思いがしました。

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