トランプ米政権の仲介によってアフリカ北東部のスーダンが10月23日、イスラエルと国交正常化で合意した。イスラエルとアラブ諸国の正常化合意は8月以降、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンに続き3カ国目で、スーダンはイスラエルと国交を有する5カ国目のアラブ国家となる。迫る米大統領選での再選を目指すトランプ氏の駆け込み的な外交成果のアピールといった側面もあるが、この流れについて、アラブの当該国や米国での論調は肯定的評価が大勢だ。
【ポイント】
・大統領選を控えたトランプ氏の外交成果
・「対イラン」の共有認識が醸成した友好
・イスラエルとの関係強化に産業面の果実
・注目される「アラブの盟主」サウジの動向
■米国 イランの脅威が築いた土壌
イスラエルとスーダンの国交正常化合意について、米メディアの論調は「トランプ氏にとって大統領選挙を前にした外交政策での成果」(AP通信)などと、おおむね歓迎ムードだ。中でも目立つのが、対イラン封じ込め論としての有効性だ。イスラム教シーア派の大国イランは、スンニ派アラブ諸国共通の敵であり、米国の同盟国イスラエルの仇敵(きゅうてき)。各地の親イラン武装勢力を支援して中東地域を不安定化させていることへの懸念が共有化されたとみている。
イスラエルとUAE、バーレーンとの国交正常化後の9月の時点で、米外交誌フォーリンポリシー(電子版)が掲載した論説は「共有されるイランの脅威により、情報機関間の協力が国民同士の友好を次第に醸成することにつながってきた」と指摘。国交正常化に向けた土壌ができていたとの認識を示した。
AP通信は10月23日、イスラエルとスーダンとの合意を受けて「新たなイスラエル承認は、共通の敵、イランを取り巻くアラブ諸国を一体化させる」と言及。「イスラエルとの関係正常化を拒否するという伝統的なアラブ戦略をひっくり返すものだ」と意義を強調した。これは「対イラン」を鍵とする点で、トランプ大統領の娘婿、クシュナー大統領上級顧問らによる中東政策そのものであり、その成功が改めて証明された形だ。