産経の本

『三島由紀夫と森田必勝 楯の会事件 若き行動者の軌跡』岡村青著

 ■事件の真相理解する一助に

 50年前の昭和45年11月、三島由紀夫は陸上自衛隊市ケ谷駐屯地で決起をうながす演説を行い、その後、割腹自殺をとげた。いわゆる「楯の会事件」である。本書は、このとき三島とともに自決した森田必勝の足跡を軸に事件の実態に迫っている。

 不遇だった森田の生い立ち、楯の会結成前後、反革命宣言、そして決起に至る様子を、著者は元楯の会会員らへの徹底した取材から浮き彫りにした。中学校教諭だった森田の兄が事件当日を述懐するプロローグは生々しく、読者を一気に引き込む力がある。

 民族派運動に傾注した森田は三島と出会い、三島の飾らない真剣さにひかれた。また三島も森田の真摯(しんし)な態度に一目を置くようになったという。三島の決起行動への傾斜は、森田の行動力が少なからず影響を与えたのではないかという証言もある。戦後民主主義の欺瞞(ぎまん)を問い、伝統・文化・歴史の復権を訴え、ゆえに2人は日本刀で自決するという古式にのっとったのだと著者は語る。

 単行本(現代書館刊)の文庫化に際し、新たに「血判書」にまつわるエピソードなどを加えた。本書は、事件の真相や経緯を一層理解する一助となるだろう。(光人社NF文庫・880円+税)

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