がんばる姉 まぶしく見つめる 「家族の作文コンクール」大賞に杉村陽香さん 雲雀丘学園創立70周年事業

【雲雀丘学園賞】ある夏の日の挑戦 雲雀丘学園高等学校2年生 宮路尊羽

 暑い。疲れた。足がちぎれそうだ。それでも漕ぐ足は止めない。家まで、もう少し。

 遡って、その日の朝。危険な暑さになると繰り返すニュースを傍目に、僕は自宅から琵琶湖までの往復120キロを自転車で日帰りする挑戦に出発した。僕は運動なんか元来苦手なのになぜこんな事をしようと思ったのかと、後悔の念すら覚え始めたのが夕方4時、やっと琵琶湖に着き折り返した。行きの片道でとっくに限界だった足にぐっと力を込め、帰路を漕ぎ出す。ギリギリの意識の中、僕はこんな事を思い出した。

 小学生の頃、ひ弱な僕にランニングを勧めた母は、毎日走った距離を記録し、合計で何キロ走ったかがわかる表を作ってくれた。合計距離を日本の白地図に書き込み「今日で、琵琶湖に到着!」等と教えてくれた。僕はそれが嬉しくて毎日走った。結局僕は北海道の稚内まで、地図上の旅をした。

 夕方6時、京都に入った。疲れですでに足の感覚は無いが、それでも自転車は倒れずに進む。不思議だ、なぜ体の一部のように自転車が漕げるのだろうか。疑問と同時にある幼稚園の頃の記憶が蘇った。僕は父と公園で自転車の練習をした。始めは全く乗りこなせず倒れまくっていた。やっと乗りこなした時、今まで自分の歩いていた歩幅の数倍の距離をすごいスピードで進むその乗り物に感動した。そして幼心に思った。「これがあればどこまででも行けるんじゃないか」と。

 様々な思い出とともに漕ぎ続けていると、とっくに日は落ちていた。気が付くと辺りはもう地図を見なくとも帰れる見慣れた光景。ちぎれそうな足でラストスパートをかける。そして9時30分。フラフラの足で自転車を止め、家族の待つ我が家のドアを開く。

 「ただいま!」

【講評】「すばらしい構成 文章も秀逸」

 門井 構成がすばらしい。過去に立ち返る回想が2カ所あり、1回目はランニングと母、2回目は自転車と父と書き分けている。文章も秀逸で、感謝ということばを一つも使わずに、大人に対する感謝を出せている。レベルの高い作品ですね。

  スケールが大きくてドラマチック。最後の「ただいま」もきいています。帰ってくる家があるから旅立てる、家族というのは帰るところ、そういうことがよく描かれているな、と思いました。

 玉岡 短い文章でつないでいるので、読んでいる私たちもサイクルロードを走っているような臨場感がありました。両親を全面的に出していないにもかかわらず、ちゃんとくみとれました。

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