鎌倉市、リサイクル業者を契約解除 「処理方法に違反」を検証

 鎌倉市から、業務委託を受けていたリサイクル会社が先日、契約期間途中で市から解約を申し渡される異例の事態が起きた。市によると、同社の「ルール違反」が判明したからだというが、いったい何があったのか。同社が市に提出していた報告記録に基づき、ある検証を行ったところ…。

 鎌倉市関谷の畑が広がる地域に、「植木剪定(せんてい)材受入事業場」と書かれた看板の掲げられている作業場がある。山林などの多い同市で発生する、木々などを剪定した際の廃棄物(木くず)が持ち込まれるこの場所が、今回の舞台の一つだ。

 ◆木くずの行方は?

 市が契約を解除したのは、リサイクル事業を手がけ、東証1部上場の産業廃棄物処理大手を親会社に持つ「A社」で、市によると、前身に当たる法人の時代から15年にわたり、市の木くず処理を担当してきた。市との間で結ばれていた主な契約内容は次の通り。

 〈A社は市内で発生する木くずを関谷の受け入れ事業場から、およそ100キロ離れた山梨県富士吉田市の同社施設に運び、ここで粉砕処理を行い、木質チップや土壌改良剤(いわゆる肥料)に加工。市はA社に処理その他の費用として、木くず1トン当たり1万3千円を支払う〉

 そのA社の関連会社は昨年10月、横須賀市内に木質チップを主な燃料とする発電施設を建設。今年5月、A社はこの会社を吸収合併した。そして翌6月、鎌倉市議会で一つの疑惑が取り上げられる。要約すると、「発電所完成以降、A社は受け入れ事業場から、富士吉田市へではなく、この発電施設に木くずを持ち込んでいるという話がある」という内容だ。

 ◆「差し控えたい」

 A社はホームページなどで、富士吉田で生産された木質チップを横須賀の発電施設で使用しているなどとしているが、同時にこの発電施設でも木くずを粉砕処理する「破砕機」を導入していることを公表している。約100キロ向こうの富士吉田に比べれば、鎌倉-横須賀間は目と鼻の先だ。

 事実なら、輸送費も格段に安くなるはずで、「木くず1トン当たり1万3千円」が支払われている税金の行方にも注目が集まった。結論からいえば、鎌倉市は「契約と違う処理方法が行われていることを確認した」として、8月末日でA社との契約を解除した。

 ただ、「ルール違反」の詳しい内容については「差し控えたい」としている。そこで気になるのが、A社が市の「環境部ごみ減量対策課」に提出していた「植木剪定材検量書」と呼ばれる作業報告だ。

 報告にはA社がトラックに木くずを積み込み、受け入れ事業場を出発した日付と時間が記載されており、4月には計9回、「1日2往復」したことになっていた。例えば、ある日は午前10時42分に出発して富士吉田まで行って戻り、午後3時20分に再び富士吉田に向かうとある。

 ◆実走してみると

 そこでトラックが1回目に出発したという記録が残る平日の午前10時42分、産経新聞も車で受け入れ事業場から富士吉田市の施設まで行ってみることにした。藤沢インターチェンジ(IC)から新湘南バイパスを通過し、トラックの制限速度である時速80キロを維持しながら東名高速を西に向かう。

 静岡県に入り、御殿場ICを降りて、富士山を目の前に見ながら北上。目的地に着き、時計を確認すると、カーナビの到着予測時刻から20分ほどオーバーし、約2時間が経過していた。荷降ろしに20~30分を費やし、また2時間ほどかけて受け入れ事業場に戻れば、絶妙なタイミングで2回目の出発時間である午後3時20分がやってくることになる。

 ◆直撃にA社は…

 実際の交通事情まで反映した「リアルな仕事ぶり」に、報告を受けた市は疑う余地もなかっただろう。では、真相は? A社を直撃すると、驚くことに「富士吉田を経由せず、直接、横須賀へ搬入があったことは事実」とルール違反をあっさり認めた。

 ただ、その後に続く「鎌倉市とも横須賀への直接搬入は検討案件となっていた。事業場の受け入れ量の増加にともない、本部と現場との指示確認ミスが生じ、正式に(鎌倉市の)了解が得られないまま、横須賀へ持ち込まれていたのが顛末(てんまつ)」(A社)との釈明からは、「業務委託を受けた自治体に実態と異なる報告をした」というもう一つの大きな間違いに、思いがいたっていない様子がうかがえる。産経新聞がその存在を追った「鎌倉-富士吉田間を1日2往復したトラック」が幻だった可能性もあることは、A社自身のこの回答が物語っているのではなかろうか。

 市は木くずの処理に停滞が生じないよう、9月1日に新しい業者と契約を締結。関谷の植木剪定材の受け入れ事業場では現在、A社のものとは異なる重機がうなりを上げている。

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 【鎌倉市の植木剪定材受け入れ事業】

 山林などの多い鎌倉市では、市内で発生する一般廃棄物(植木類の剪定により発生したもの)を資源化するための受け入れ事業場を、平成7年に開設。処理手数料は市民が1回につき、重さ100キロまで100円で、超過分は10キロにつき40円(※120キロであれば180円)。A社は市からこの事業場の維持管理、手数料の徴収などの業務委託も受けていた。

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