観客上限緩和、ハマスタで実証実験 感染回避データ、五輪導く試金石

【新型コロナ 大規模イベント技術実証】大規模イベントガイドライン策定に向けた技術実証実施日に球場に入場するファン=30日、横浜スタジアム(桐山弘太撮影)
【新型コロナ 大規模イベント技術実証】大規模イベントガイドライン策定に向けた技術実証実施日に球場に入場するファン=30日、横浜スタジアム(桐山弘太撮影)

 大規模スポーツ観戦の入場制限緩和に向け、新型コロナウイルス禍の観客らへの影響を調べる実証実験が30日、プロ野球DeNA-阪神3連戦の試合会場、横浜スタジアム(横浜市)で始まった。高性能カメラやIT技術を用いて観客の流れや声援の際の飛沫(ひまつ)がどう拡散するかなどのデータを採取。検証結果は来夏の東京五輪・パラリンピックの開催準備にも活用されることが期待され「ウィズコロナ」を見据えたスポーツ観戦のあり方を模索する。

 今回の実証実験は政府の了承を得て実施。プロ野球やJリーグなど定員1万人超の大規模イベントでは現在、入場制限が50%に設定されているが、3連戦初日の30日は上限を80%、31日は同90%、11月1日は満員と段階的に引き上げ、コロナ禍の大規模スタジアム観戦への影響を調べる。一方、30日の観客数は定員3万2402人の約51%となる1万6594人で、目標の80%に届かなかった。

 検証には最先端センサーやスマートフォンなども駆使。スタジアム内や外周には高精細カメラ計13台が設置され、入退場時の観客の流れやマスク着用率などを調べる。スタンドなどに取り付けられた二酸化炭素(CO2)濃度測定器や風速計を通じて、観客の飛沫の拡散ぶりも検証。スマホ用接触確認アプリ「COCOA(ココア)」の使用も促し、感染者や濃厚接触者が出た場合の追跡が可能かどうかも調べる。

 実証実験の分析結果は11月末までにまとめられる予定。横浜スタジアムは東京五輪で野球とソフトボールの会場になっており、大会準備に向けた参考事例となりそうだ。

 関係者からは実証実験への期待の声が上がっており、球団の南場智子オーナーは「広くデータを公にしてシェアしたい」と強調。この日、西村康稔経済再生担当相とともに球場内を視察した神奈川県の黒岩祐治知事は「必ずや来年の五輪を成功に導きたいと感じた。今日は大きな一歩だ」と語った。

 一方、観客からは不安の声も。横浜市港南区の女性(26)は「五輪を考えると、この実証実験は試金石として意味があると思う。ただ感染者が出たら怖い」。横浜市旭区の会社員、上野大輔さん(43)は「観客が増えるのは楽しみではあるが、個人個人が消毒、マスクを徹底してほしい」と語った。

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