【書評】『日本人は論理的でなくていい』山本尚著 日本を世界一の国に - 産経ニュース

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書評

『日本人は論理的でなくていい』山本尚著 日本を世界一の国に

 なんと言っても書名がいい。

 論理的思考が苦手だから、勉強して論理的展開ができるようになりたいと願っている一人の言論人の目の前に、『日本人は論理的でなくていい』という本が現れた。おまけに著者、山本尚氏はノーベル化学賞の候補者だと帯にある。

 本書は最初の1ページから私を幸せにしてくれた。いまのままの「日本人としての私」でよいと言明しているのである。日本人だから感じとり、内向し、そろりそろりと考えているのであり、外向的かつ攻撃的で、論理の立て方も切り口も鮮やかな西洋諸国の人々と、そこが違うだけなのだと諭している。

 だが、日本人は感じることの裏側に論理の支えも用意するようにとも教えている。論理なしには感性はあらぬ方向に砕け散りかねないからだ。

 前向きであることの大切さも同感だ。本書の冒頭に再録された山本氏の手紙は研究室の全員に送られた。その中で氏は呼びかけている。短所は無視して長所だけを見よう、皆で尊敬し合って褒め合って、世界一の化学研究チームを作ろう、と。仲間褒めが全員の幸せを招き、幸せが成果を生むと説く。

 日本人は今のままでもっと自信を持ってよいのだ。森羅万象の美しさ、怖さ、面白さ、不思議さをひと呼吸ごとに吸い込み、とっぴでよいから大きな夢を描く。諦めずに進めば、夢は必ず実現する。意志強固に楽観的で揺るがぬ信念を持つこの人材はいかにして生まれたのか。

 彼は子供時代、ツケでひと月に100冊も本を買って読みふけった。灘中の国語の先生は中勘助の『銀の匙』を3年かけて教えてくださった。学校の勉強を放って、好きな化学の危ない実験を繰り返した。そんな山本少年をご両親と先生は見守った。良き教育が日本の未来を明るくする人材を育てたのだ。

 山本氏は日本を世界一の国にしたいと願う。日本人の特質を無限大にのばし深めるのだ。氏を含めて多くの日本人が21世紀を牽引(けんいん)する研究を成し遂げることで、その夢はかなうと氏は断言する。氏は必ずノーベル賞受賞で夢をかなえるだろう。

 日本学術会議の会員になれなかったと抵抗している先生方にも読んでほしい一冊である。(産経新聞出版・1400円+税)

 評・櫻井よしこ(ジャーナリスト)