話の肖像画

パティシエ・鎧塚俊彦(55)(1)こだわりの「ライブデザート」

できたての味わいに加え、目前でプロの手さばきを眺められるのがライブデザートの魅力だ
できたての味わいに加え、目前でプロの手さばきを眺められるのがライブデザートの魅力だ

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《ベルギーの三つ星レストラン(当時)で日本人初のシェフパティシエを務め、要人の公式晩餐会(ばんさんかい)のデザートなども担当。日本を代表する洋菓子職人だ。最大の持ち味は、すし屋のようなカウンター席で注文を聞き、客の目の前で創作し、できたてを出す「ライブデザート」で、目当てのファンが全国から訪れるほど。斬新なデザートの着想源には、意外なことにある庶民の味の記憶があるという》

お肉屋さんの揚げたてサクサクのコロッケが大好きなんです。「ライブデザート」もいわば揚げたて、サクサクのコロッケと同じで、デザートもできたての方がおいしい。スフレはふわふわですし、焼きたてのパイに果物とクリームをのせてすぐ出すミルフィーユは、サクサクでクリーミー。目の前で作って出すと、お客さんはその食感に魅了されます。

今から16年前、東京・恵比寿にカウンター5席(のちに6席)で最初の店を出したとき、「客単価はラーメン屋、回転率はすし屋。商売としては最低だね」と冷やかされたこともありました。その通りで、全然もうかりません。商売としてはすし屋とラーメン屋の悪いところどりなわけです。それでもライブデザートにこだわりました。もうかることをするのは当たり前で、なんでこんなもうからないのに一生懸命やってるんだろうと思われることこそ、自分がやりたいことで、一生懸命になれることなんです。幸いライブデザートを楽しんだお客さんが、帰りに焼き菓子やケーキを買ってくださったので、商売としては順調に行きました。