【ソウル=名村隆寛】ベトナム戦争に派遣された韓国軍により家族を虐殺され自身も負傷したというベトナム人女性が韓国政府に損害賠償を求める裁判を初めて起こし、ソウル中央地裁で審理が進められている。韓国では慰安婦問題などで日本批判が長年展開されているが、「戦時の暴力」をめぐり韓国政府は法的責任を問われる側に立たされた。
訴えを起こしたのはグエン・ティ・タンさん(60)。7歳だった1968年2月、ベトナム中部クアンナム省の村落で兄とともに韓国軍の銃撃を受け、1年以上の入院を要する重傷を負った。地元では70人以上が死亡。タンさんの母や姉も犠牲となったという。
タンさんは今年4月、韓国政府が虐殺に対し明確に謝罪せず被害の救済がなされていないとし、約3000万ウォン(約280万円)の損害賠償を求め提訴。第1回口頭弁論が今月12日に開かれた。新型コロナウイルス流行の渡航制限でタンさんは訪韓できず、韓国人の弁護団が対応に当たっている。