菅義偉首相には靖国神社を速やかに参拝してもらいたい。
政権発足後初めてとなる靖国神社の秋季例大祭(17、18日)では、菅首相を含め参拝する閣僚の姿は見られなかった。極めて残念である。
菅首相は「内閣総理大臣」の肩書で供物の真榊(まさかき)を奉納した。戦没者らの御霊(みたま)に哀悼の誠をささげる行為だが、参拝する方がはるかに望ましいことは言うまでもない。
今年の終戦の日には、安倍晋三首相(当時)は参拝しなかったものの高市早苗総務相(同)ら閣僚4人が参拝していた。
靖国神社には、幕末以来の246万余柱の戦没者に加え、境内の鎮霊社で、空襲などで亡くなった一般国民や外国の戦没者が祀(まつ)られている。
日本を守るため尊い命をささげた戦没者にとって靖国神社に祀られることは自明だった。だからこそ、わが国の戦没者慰霊の中心的施設なのである。
国のリーダーが参拝してその御霊を慰め、顕彰することは、日本の国として破ってはならない戦没者との「約束」といえる。だからこそ、占領期を含め戦後も長く、昭和天皇のご親拝や首相、閣僚らの参拝が続けられた。
だが、昭和後期になって中韓両国の干渉や日本国内の心無い批判により参拝が政治問題化してしまった。勅使の参向はあるものの、ご親拝は途絶え、多くの首相も参拝を控えるようになった。
これに対し、平成13年から18年まで毎年1回、計6回参拝して国のリーダーとしての責務を果たしたのが小泉純一郎首相(当時)だった。安倍氏は首相としては、25年に一度だけ参拝した。
菅首相の真榊奉納に対して、中国外務省報道官は靖国神社を「日本軍国主義の象徴」と決めつけ、奉納は「侵略の歴史に対する誤った姿勢を反映している」と批判した。韓国外務省報道官は奉納に「深い遺憾の意」を表明した。
このような内政干渉は許されない。伝統文化に従って戦没者に祈りをささげることを非難されるいわれはない。日本は平和と民主主義を尊重し擁護してきた国だ。
参拝を控えて真榊の奉納にとどめてもいいがかりをつけてくる国々への外交的配慮よりも、戦没者や遺族への思いを先にして参拝することが、日本の首相としての大切な務めである。