韓国のイラストエッセーが日本で爆発的な人気を集めている。世界的に活躍するK-POPアーティストの動画に映ったり、人気韓流ドラマに登場したりしたことで火がつき、10代の読者も獲得。発行部数が40万部に達した作品もある。カラフルな装丁とかわいらしい絵が特徴的で、SNSにアップする読者もいる。人気に牽引(けんいん)されるように、韓国文学の存在感も日本で高まっている。
(文化部 森本昌彦)
発売前から話題に
昨年2月の発売から1年半以上が過ぎたが今も売れ続けているのが、「私は私のままで生きることにした」(ワニブックス)。今月2日時点で19刷、40万部を発行している。
日本語版出版前、世界的人気を誇る男性グループ「BTS(防弾少年団)」のメンバーの動画に、同書が一瞬映っていたことが話題になった。
その影響で、発売直後はBTSファンが購入。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日本社会で自粛ムードが強まった4、5月にも人気を伸ばした。読者層は20代から50代の女性が多く、BTSの影響で10代女性も1割ほどいるという。
ワニブックスで同書を担当する安田遥さんは「イラストエッセーなので普通の文学本に比べて文字数が多くなかったり、改行が多かったりして、普段本をあまり読まない人にも『読みやすい』と言ってもらえている」と話し、BTS効果に加えて読みやすさを人気の理由に挙げる。
アイテムとして認識
韓国のイラストエッセーの日本語版はほかの出版社からも発売されているが、韓国の人気芸能人の存在が人気を後押ししている。
今年5月に発売され、1日時点で8万部を発行する「すべての瞬間が君だった」(マガジンハウス)は韓流ドラマに登場した。米アカデミー賞に輝いた映画「パラサイト 半地下の家族」や人気ドラマ「梨泰院(イテウォン)クラス」で知られる人気俳優、パク・ソジュンさん主演の「キム秘書はいったい、なぜ?」に登場して関心を高めた。
読者層の中心は10代~20代前半の女性。写真共有アプリ「インスタグラム」に同書の写真を掲載する人も多く、マガジンハウスで同書のプロモーションを担当する永田滋友さんは「本というよりアイテムとして認識している人もいる。インスタにアップしたりするなど、友人とコミュニケーションを取るツールとして受け止められ、人気が広がった」と話す。
フェア参加社増加
東京・神保町の韓国ブックカフェ「CHEKCCORI(チェッコリ)」では、韓国のイラストエッセーの原書と日本語版が平積みになっている。同店の宣伝・広報を担当する佐々木静代さんは「K-POPや韓国ドラマというコンテンツの力は強く、そこから本の購買が促進される動きがあるとつくづく感じている」と話す。実際、韓国ドラマに登場した本がほしいという問い合わせが店に寄せられているという。
日本での韓国文学の存在感も高まっている。2年前から始まった「韓国文学フェア」に参加する出版社数は年々増えて第3回の今年は12社。11月28、29日には「K-BOOKフェスティバル 2020 in Japan」がオンラインで開催され、「私は私のままで生きることにした」の著者、キム・スヒョンさんの登壇も予定されている。
韓国文学の日本での盛り上がりについて、佐々木さんは「今年はイラストエッセーもいっぱい出てきて点数が多くなったことで、書店にもコーナーができて読者が目にする機会が増えてきた。ちょうど韓国ドラマのブームも来て、さらに韓国への関心が高まり、韓国の本が売れるという良い循環になっているのではないか」と語った。