急降下する地価 インバウンド頼みの脆弱性で底見えず

インバウンドが消滅し、価格、上昇率ともに下落に転じた大阪・ミナミの住友商事心斎橋ビル=大阪市中央区
インバウンドが消滅し、価格、上昇率ともに下落に転じた大阪・ミナミの住友商事心斎橋ビル=大阪市中央区

 新型コロナウイルスの感染拡大で、旺盛なインバウンド(訪日外国人客)需要に支えられ、ホテルや商業施設の建設が相次ぎ上昇を続けていた商業地の地価の下落が目立っている。特にインバウンドの人気が高かった道頓堀などのある大阪・ミナミは顕著で、高額賃料で出店していたドラッグストアの休業などが相次ぎ、街の勢いが急激に低下している実態が地価からも鮮明になった。当面は訪日客の回復が期待できず、専門家は「一層の下落は避けられそうにない」と警鐘を鳴らす。

(黒川信雄)

首の皮一枚でやりくり

 「雇用や家賃面での政府支援が途絶えれば、ミナミの飲食店は倒産が相次ぐだろう」 

 ミナミの中心部で飲食店を経営する男性は、周辺の店舗を取り巻く厳しい状況を明かした。飲食店の多くが政府の支援を受けてなんとか経営を維持している状況だという。

 この男性によると、ある飲食店経営者は店舗が入るビルの大家との交渉に、家賃を半額に値下げすることを要求する書類とビルからの退去を申請する書類の両方を持って臨んだといい、「どの飲食店も首の皮一枚でやりくりしている」と嘆いた。

今年に入って急降下

 9月29日に公表された7月1日時点の都道府県地価(基準地価)で、急上昇を続けてきたミナミの地価が一転、下落に転じた。道頓堀川沿いの一等地にある住友商事心斎橋ビル(大阪市中央区)の価格は1平方メートルあたり2330万円で、前年より4・5%下落。その前年は45・2%上昇だったため、急ブレーキがかかった格好だ。

 3月に発表された1月1日時点の公示地価で同ビルの価格は1平方メートルあたり2870万円。前年からの上昇率は44・9%だった。このことからも、ミナミの地価は新型コロナの感染が拡大し始めた今年に入ってから急激に下落したことが見て取れる。