コリアタウンの「ポッサム」 始まりは日本の韓流ブームから - 産経ニュース

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コリアタウンの「ポッサム」 始まりは日本の韓流ブームから

コリアタウンの「ポッサム」 始まりは日本の韓流ブームから
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韓国にはご飯や肉、おかずなどを野菜などに包んで味わう食文化が根付いているという。蒸したり、ゆでたりした豚肉の薄切りや、特製のサムジャン(韓国の合わせみそ)などを葉野菜で包んで食べる料理「ポッサム」もその代表格。西日本最大級の韓国街「大阪・生野コリアタウン」(大阪市生野区)でも提供される料理だが、この街のポッサム人気は、日本で起きた韓流ブームに由来していた。

元々は巻かなかったけれど…

大阪・生野コリアタウンにある豚肉専門店「サンコー食品」(昭和34年創業)を経営する良元現雄(よしもとげんゆう)さん(36)によると「韓国でポッサムが市民権を得たのは、近年100年ほどのことではないか」とのこと。大正期に日本に移り住んできた在日韓国・朝鮮人にとって、ポッサムは新しい食べ方で親しみがなかったといい、コリアタウンでは長く、蒸し豚はキムチや酢みそなどにサッとつけて野菜などに巻かずに食べるのが王道だった。

そんな生野コリアタウンで、ポッサムが広がったのは平成15年、日本で大ヒットした韓国ドラマ「冬のソナタ」の影響で第1次韓流ブームが起きたころ。ドラマでの食事シーンやグルメ番組で登場するようになったのをきっかけに日本人のファンの間で人気に火がつき、提供する店も増えた。

当時、韓国に留学中だった良元さんも「蒸し豚が食べたい」と思いたったとき、師事した教授にポッサムを教わった。ポッサムという言葉には「風呂敷で包む」という意味があり、「風呂敷に福を包む」という意味が重ねられていることが人気の理由の一つという。

初めてポッサムを口にした良元さん。「蒸し豚をこんな風に食べるなんて。新しい発見で、びっくりした」と思い出す。

一口大サイズで

韓国留学以来、ポッサム料理にみせられた良元さんは平成31年に開いた生野区の御幸通商店街の韓国料理店「オヂェパメン」でポッサムを楽しめる定食「スユ●(=小書き片仮名ク)ペッパン」を提供している。

「日本の人たちにも愛されるポッサム料理を作りたい」と、味にもこだわる。特製スープで約2時間煮込んだやわらかい豚肉と味付けみそなどの具材を塩漬けしたハクサイで包んで食べるポッサムはほどよい歯応えで、「サクサク」という咀嚼音がいい。好みでネギやダイコンのキムチ、チョジャン(韓国酢みそ)を加えるなどいろんな味や食感が楽しめる料理はジューシーで、噛むごとに豚肉の甘みとキムチの辛さが口いっぱいに広がる。

「豚肉と野菜との味のバランスがよく、ハクサイのしゃりしゃり感は、歯切れもよく、しっかり噛んでストレス解消にもってこいです」と良元さんは笑う。

韓国では手のひら大の野菜を大皿に盛って、好きなサイズに切って豪快に食べるのが一般的というが、日本人の食べ方の好みに合わせて、同店では、最初から一口大のサイズにした野菜を用意する。

西日本最大級の街

ポッサムをはじめ、クッパ(スープ飯)やチヂミなど本場韓国の料理が気軽に楽しめる大阪・生野コリアタウン。JR鶴橋駅の南東約1キロに位置し、御幸森(みゆきもり)天神宮から東西約500メートルに延びる3つの商店街(計約120店舗)が連なる。食材店や飲食店、雑貨店などが通りの両側にぎっしりと並び、多くの若者らが韓国のグルメやコスメ、グッズなどを求めて詰めかける一大観光スポットとなっている。

商店街は、戦前、日本による朝鮮半島の統治を背景に、半島から移住してきた人たちが形成した。かつては「朝鮮市場」と呼ばれ、業者や同胞など地元住民向けの商売をしていたが、その後、在日韓国・朝鮮人の生活様式の変化や来訪者の減少、後継者不足などへの危機感から、新たな顧客を呼び込もうと、特色ある商店街「コリアタウン」に転換した歴史を持つ。

徴用工や慰安婦問題などによる日韓関係の悪化を受け、訪日韓国人が激減した昨年も、コリアタウンは活況を呈し、来街者は約200万人を数えた。今年は新型コロナウイルスの感染拡大もあって、一時期人通りが途絶えたが、自粛ムードも緩和された現在は週末を中心に1日約8千人が訪れ、その8割を10~20代を中心とした日本人の若者が占めているという。

御幸通中央商店会会長の洪性●(=立に羽、ホン・ソンイク)さん(63)は「コリアタウンでは、これまでも、韓国本土で見られないような、日本の食に合わせた日韓のコラボ料理を生み出してきた。食や文化が混ざり合い、交流してきた場所です」と話す。

韓流ブームがもたらした生野コリアタウンのポッサム料理もその歴史が育んだ、日韓交流の証と言えるかもしれない。(高橋義春)