アートウォッチング

古びない「週刊文春」の顔 和田誠さん没後1年 全表紙を収めた画集刊行 

【アートウォッチング】古びない「週刊文春」の顔 和田誠さん没後1年 全表紙を収めた画集刊行 
【アートウォッチング】古びない「週刊文春」の顔 和田誠さん没後1年 全表紙を収めた画集刊行 
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40年、休むことなく

 イラストレーターの和田誠さん(1936~2019年)が世を去って1年。命日にあたる10月7日、和田さんが描いた「週刊文春」全表紙を収録した画集『表紙はうたう 完全版 和田誠・「週刊文春」のカヴァー・イラストレーション』(文芸春秋・9000円+税)が刊行された。正確には、2008年に同誌の創刊50周年を記念して出版された、同名の画集の増補版だ。

 猫、鳥、映画、楽器、外国の旅…など和田さん自らカテゴリーに分けて厳選した原画600点が、本人の解説付きで掲載されている。描いた時の思いや背景を少し、知ることができる。1977年5月から40年間、休むことなく手掛けた全表紙もずらり。

 記念すべき1回目は、鳥がエアメールの封筒をくわえている、ちょっとメルヘンな作品。題名を編集者に聞かれ、和田さんはジャズの曲名にちなみ「エアメール・スペシャル」と付けた。このあたりのエピソードは本書冒頭の和田さんの文章に詳しいが、以来、表紙の題名は音楽の曲名から借りることにしたそうだ。ちなみに画材はずっと、グァッシュ(不透明水彩絵具)で、表紙の原寸大で描いている。

 毎週のことだから、モチーフは実に幅広い。花で季節の移ろいを表したり、エープリル・フールにだまし絵・隠し絵を描いてみたり。作家の吉行淳之介の訃報に触れてカクテルのレッド・アイを描くなど、友人たちへの追悼の気持ちが絵になることもある。「鯨の耳骨」といった一見わけのわからないもの、抽象も意外と多い。

 編集者が内容をオーダーすることはほぼ皆無だったそうだが、ミレニアムの2000年1月の号では「20世紀を総括するような絵を」と注文を受けたという。和田さんは、片観音折りという綴(と)じ方で、いつもの2倍のサイズに象徴的な人やモノを描き入れた。ライト兄弟の飛行機、アインシュタイン、アンネ・フランク、マリリン・モンローに美空ひばり…。

時とともにシンプルに

 政界の疑惑や芸能人スキャンダルなど文春砲がどんなにセンセーショナルであれ、表紙はいつも、和田さんがデザインしたシンプルな題字(ロゴ)と、穏やかで時折ユーモラスな絵。それが当たり前のようになっているから、かつて文春の表紙を女優の写真が飾っていたと聞いても、イメージするのが難しい。

 もっとも、和田さんの表紙も不変ではない。全表紙カタログを眺めると、画風やデザインなどに多少変化があるのがわかる。特に80年代後半までの表紙には、<戦後最大の謎「M資金」><総力特集 石原裕次郎死す>などと注目記事のコピーが入っていて今より週刊誌っぽい。時代とともに、シンプルに絵を見せて中身は中身、という方向になったのだろう。

 ライバル誌「週刊新潮」といえば谷内六郎さん、成瀬政博さんの表紙であるように、文春の「顔」はやはり、和田さんの絵。2017年7月27日号から、同誌の表紙は和田さんの過去の傑作選になっており、今後も続くという。「昔の作品であっても、全然古く感じませんよね」と担当編集者。

東京で原画展も

 刊行記念の原画展「和田誠さんと。」が10月22日~11月15日、渋谷PARCO(東京都渋谷区)の「ほぼ日曜日」で開催される。原画約40点が展示され、筆遣いを間近に見ることができる。

 三谷幸喜さん、清水ミチコさん、夢眠ねむさん、糸井重里さんが選んだ「わたしの好きな表紙」という企画も興味深い。イラストレーター、デザイナーとしての和田さんの幅広い仕事、愛用の筆記具なども合わせて紹介される。

 同展は午前11時~午後9時。入場料500円(小学生以下無料)。混雑時は入場制限あり。(黒沢綾子)

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