勇者の物語

魅入られた一球 崩れたリズム「腕が…」 虎番疾風録番外編88

九回2死一、三塁。王へ投じた山田の1球は魅入られたように真ん中へ=後楽園球場
九回2死一、三塁。王へ投じた山田の1球は魅入られたように真ん中へ=後楽園球場

■勇者の物語(87)

舞台を東京に移した第3戦、阪急が中1日の山田、巨人は関本が先発。阪急は二回、1死から森本が中前安打。続く大熊が右翼越えに二塁打を放って先制。この1点を山田が2安打無四球と完璧な投球で守る。山田は後年、当時の心境をこう語った。

「自分でも信じられないぐらい調子が良かった。長嶋さんや王さんでも関係なし。打たれるはずがない-という感覚で投げていた」

◇第3戦 10月15日 後楽園球場

阪急 010 000 000=1

巨人 000 000 003x=3

【勝】関本1勝 【敗】山田1敗

【本】王②(山田)

<痛恨の四球>九回1死で柴田。山田の投球リズムが、それまでのゆったりとしたものから微妙に早くなった。勝ちを急いだのか、柴田にこの試合初めての四球を与えた。

<疑問の間合い>続く柳田を右飛。2死一塁で長嶋。マウンドへ西本監督が向かい「間」を取った。

<不運の一打>長嶋への初球は外角へ流れるスライダー。凡打コースだ。長嶋は体を泳がせながら引っ張る。打球は遊撃・阪本の右を抜いて中前へ。

<魅入られた一球>2死一、三塁で王。マウンドの山田は体が重くなるのを感じたという。

「気持ちは負けていなかった。でも、腕が動かない。ズーンという重さ。鉛の重りを背負ったような感じだった」

そして1-1から投じた3球目、ストレートが真ん中へ。そのとき一塁を守っていた加藤は「なんでそこに投げるんや-と思ったよ。あれはオレにでも打てるタマやった」と振り返った。

打球は快音を残して右翼席へライナーで突き刺さった。逆転サヨナラ3ラン。山田はガックリとマウンドに膝をついた。ネット裏で評論家の山根俊英はこう指摘した。

「西本監督が出てきたとき不吉な予感がした。長嶋、王を迎えてオタオタするのははたで見ている方で、本人は案外ケロっとしているもの。しかし〝流れ〟を中断され、考える時間を与えられると、その恐怖心がわいてくる。万全を期したつもりが逆に災いとなった感じがする」

大きな大きな1敗となった。(敬称略)

■勇者の物語(89)

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