書評

『文学は実学である』荒川洋治著

 詩人、エッセイストである著者は、名うての本の読み巧者かつ紹介者でもある。本書は、1992年から2020年の間に発表された随筆の中から86編を精選したものだ。

 表題作の「文学は実学である」はこう書き出される。《この世をふかく、ゆたかに生きたい。そんな望みをもつ人になりかわって、才覚に恵まれた人が鮮やかな文や鋭いことばを駆使して、ほんとうの現実を開示してみせる。それが文学のはたらきである》。その才覚に恵まれた著者の文章に触れると、この世界の奥深さに触れる気がする。さらには紹介される本を無性に読みたくなる。(みすず書房・3600円+税)