今週、いちばん読みたかった記事は『ニューズウィーク日本版』(10・13)の「検証・三峡ダム」「中国ダムは時限爆弾なのか」(本文タイトルは「世界最大の中国ダムは本当に決壊するのか」)だ。
ノンフィクション作家、譚●(=王へんに路)美さんによる9ページのリポート。
月刊『Hanada』9月号でも取り上げたが、中国では6月半ばから62日間にわたった大雨と集中豪雨により各地で大洪水が発生。三峡ダムも、水位167メートルを記録し、制限水位を超えた。
〈YouTubeには(中略)もし決壊すれば、約30億立方メートルの濁流が下流を襲い、武漢、南京が水没し、上海付近の原子力発電所や軍事基地まで甚大な被害を受けるだろうと危機感をあおった。4億人が被災するとの試算もあった〉
しかし、譚リポートでは日本の河川、特にダム工学研究の第一人者、京都大学防災研究所水資源環境研究センターの角哲也教授が〈「決壊説」を一蹴〉。
角教授だけでなく、他の専門家の見解も聞いてほしいところだ。詳細は同リポートをお読みいただきたい。
譚さんはもう1本、「ダム輸出国の責任と無責任」と題し、アジア6カ国を流れる大河メコン川流域が中国のダム建設によって環境破壊されている現状をリポート。中国は〈環境破壊まで「輸出」〉しているのだ。
『週刊新潮』(10月15日号)のトップは「『菅首相』を抱き込む『令和の政商』」。
前共同通信論説副委員長を首相補佐官に起用。香港に代わる国際金融センターの関西誘致、地銀再編などをもくろむネット証券大手「SBIホールディングス」の北尾吉孝社長が「菅総理に接近」。
その背景には政治系シンクタンク「大樹グループ」矢島義也会長の〈存在がある〉として、その人となりを詳述。かつて『FOCUS』に〈乱交パーティー「女(ぜ)衒(げん)芸能プロ社長」の正体〉と報じられたことにまで触れているのは『新潮』らしい意地悪。
それに引き換え『週刊文春』(10月15日)は菅政権批判の繰り返しで、新味はない。
(月刊『Hanada』編集長)