行政改革の対象にするのは当然だ。
河野太郎行政改革担当相が9日の会見で、日本学術会議の予算の使い方や事務局の機構、定員について行革の観点から検証する考えを示した。
学術会議は、年間約10億円の国費で運営されている。その一方で、日本学術会議法に基づく政府への勧告は、平成22年8月の科学技術基本法の見直しなどについて行われたのが最後だ。
提言は最近3年間で80超に及ぶが、政府の諮問を受けた答申はこの13年間皆無である。政府自身が頼りにしていないということではないのか。
河野氏は8日、自民党の下村博文政調会長と会談し、政府と自民党が学術会議のあり方の検討で協力することを確認した。下村氏はプロジェクトチームを設け、同会議の非政府組織化も視野に早期に党の提言をまとめる。
河野氏は「自民党から行革の観点からも見てほしいと要請があった。年度末に向けて聖域なく見ることにしている」と述べた。その言葉を忘れずに具体的な成果をあげてほしい。
予算削減や人員整理など組織改編や運営方法の見直しを伴う改革には抵抗がつきものだ。菅義偉首相は9日、内閣記者会のインタビューで、同会議を行革の対象として検証することを歓迎した。スピード感をもって改革を進めてもらいたい。
これは新会員候補の任命問題のすり替えではない。同会議は内閣府の下にある広義の行政機関で、多くの予算を費やし、事務局には50人の常勤職員がいる。「日本学術会議」の名にふさわしい働きをしているかを、国民の前で議論すべきである。
自民党の山谷えり子元拉致問題担当相は8日の参院内閣委員会で、学術会議が中国科学技術協会と協力促進を図る覚書を締結したことを取り上げ、「日本の平和を守るための研究にはブレーキをかけながら、中国には非常に協力的だ」と指摘した。
学術会議は軍事科学研究を忌避する声明を出し、防衛省の制度を利用した軍民両用の先端研究を排斥する一方で、研究成果の軍事転用をためらわない中国との協力には積極的だ。行政改革は機構や予算の問題だけにとどまらない。国民の安全を損なうような二重基準は正す必要がある。