主張

日本学術会議 前例に囚われず大ナタを

 あしき前例に囚(とら)われず、改善すべきは改善すべきである。

 日本学術会議会員の任命方法のことだ。会議が推薦した候補を日本学術会議法に基づき、任命権者の首相が形式的に任命する従来のやり方こそ見直さねばならない。

 衆院内閣委員会閉会中審査が7日開かれ、日本学術会議が推薦した会員候補6人を菅義偉首相が任命しなかったことをめぐる論戦が行われた。

 三ツ林裕巳内閣府副大臣は、首相が会議の推薦通りに任命する義務はないとする政府の立場について「学術会議法の解釈を変更していない」と述べた。任命しなかった理由は明確な説明を避けた。

 菅首相は、その理由を「総合的、俯瞰(ふかん)的活動を確保する観点から判断した」と述べている。

 一方、立憲民主党の今井雅人氏は首相の任命権が「形式的なものにすぎない」とした昭和58年の国会答弁との整合性を追及した。

 政府は平成30年11月、学術会議の推薦通りに任命する義務は首相にないとする内閣府の見解をまとめた。人事への介入という批判は当たらない。

 ただ、政府は従来の形式的な任命からなぜ、このタイミングで方向転換したのか、その理由をもっと語るべきだ。具体的には、国内外の環境変化についてどんな認識を持ち、いかなる理由で一律的だった従来の任命方法を変えたのかということである。

 その点では、日本を取り巻く安全保障環境が悪化する中、国民の生命と安全を守る防衛研究に異議を唱え続ける学術会議こそ、国益を害しているとはいえまいか。

 学術会議は27年9月、中国科学技術協会との協力促進を図ることを目的とした覚書を締結した。軍事研究を行わないとしながら、学術研究の軍事転用を積極的に進める中国との学術協力を行うのでは二重基準といえよう。

 学問の自由への侵害という批判もあるが、そもそも学術会議メンバーに任命されないことがなぜ学問の自由の侵害に当たるのか。会員にならなければ自由な研究ができないわけでもあるまい。

 むしろ、日本中がコロナ禍で苦しんでいるときに、学術会議は国家の知恵袋として、適切なタイミングで政策提言をしてきたと胸を張って説明できるのか。

 菅氏には大ナタを振るってもらいたい。

会員限定記事会員サービス詳細