熊本県の球磨川流域で7月に発生した豪雨被害の検証委員会の第2回会合が6日、県庁で開かれた。国土交通省や県は、ダムに頼らない治水策として計画や整備を進めていた堤防の移設やかさ上げ、遊水地の設置などの対策が完全に実施されていた場合でも、大規模な浸水被害が見込まれたとの推定を示した。
検証委には国交省と県、流域12市町村が参加した。一連の治水策で、堤防などの設計基準となる計画高水流量などは、戦後最悪の被害をもたらした「昭和40年7月洪水」をもとに策定している。この日示された検証結果では、既存の対策を総動員しても、計画高水位を上回る地点が発生するとした。
また、球磨川支流に川辺川ダムが建設されていた場合でも、豪雨時に人吉市街で球磨川の水位が約1・9メートル低下し、市内の浸水範囲が約6割減少するなど一定の効果があるものの、全ての被害は防げないとの推定が示された。
川辺川ダムをめぐっては、建設計画の是非についての議論が再燃している。検証委では、流域自治体の首長から「水量の大きな低減効果が発揮できるダムの重要性や必要性が立証された」との意見が出た。蒲島郁夫知事は平成20年に川辺川ダム建設計画に反対を表明し、当時の民主党政権下の国が中止方針を示した。蒲島氏は今年8月下旬、球磨川の治水対策をめぐり「川辺川ダムは選択肢の一つだ」と述べている。ただ、今回の検証結果は、川辺川ダム建設を含めた治水策の策定以前に、前提条件の見直しを迫る。
検証委では、錦町の森本完一町長が「(球磨川)流域市町村の総意として、抜本的治水策を早期に立案してもらえるよう、お願いしたい」と要望。これに対し蒲島知事が「県として国、流域市町村と新たな協議の場を設置し、検討する」と応じた。
国と県、流域市町村は今後、計画高水流量などの再設定を含め議論を進めるとみられる。