全盲の66歳女性が放送大学卒業、盲導犬と歩んだ14年

全盲の66歳女性が放送大学卒業、盲導犬と歩んだ14年
全盲の66歳女性が放送大学卒業、盲導犬と歩んだ14年
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 瀬戸内海に浮かぶ小豆島(しょうどしま)で暮らす全盲のマッサージ師、室崎若子さん(66)=香川県土庄町=が9月、放送大学を卒業した。自宅でテレビやラジオの講義を聴き、面接授業(スクーリング)の日は盲導犬とともにフェリーで高松市にある放送大香川学習センターに通学。知識が広がったあっという間の14年間と振り返る。同センターで開かれた卒業式であいさつした室崎さんは「やり遂げられて満足している」と節目を迎えた喜びを語った。

点字で卒業生代表のあいさつ

 9月27日の卒業式。ラブラドルレトリバーの盲導犬「タビラ」とともに出席した室崎さんは卒業証書を受け取った後、卒業生を代表してあいさつ。指先で点字をなぞり、「家庭や仕事では経験できなかった出会いの機会を得られたことに感謝します」などと推敲(すいこう)を重ねた文章を読み上げた。

 同センターの有馬道久所長は「放送大学で学ぶ学生のロールモデルとして、元気で活躍してほしい」とはなむけの言葉を贈った。

52歳で入学

 室崎さんは先天性の視覚障害のため、30歳の時から盲導犬とともに生活。放送大学で学んだ知人の勧めで52歳だった平成18年10月に入学した。人とのかかわりの中で興味を持った心理学と教育学のコースを選択。県立盲学校を卒業して以来の本格的な学びの機会とあって、じっくりと単位を取得しようと考えた。

 自宅で、音声に変換した教科書の内容やテレビ、ラジオの講義を聴いて勉強。高松市で働いていた頃には通勤中の船内でテキストを読み込んだ。

 同センターで土日に行われる面接授業には、フェリーとタクシーを利用し盲導犬と登校。学期末の単位認定試験は点字問題で受験した。室崎さんは「自分のペースで勉強できたが、試験前は焦りを感じることもあった」と思い返す。

「自分だけではできなかった」

 講義の中で強く印象に残ったのは病院で受診する際の心構え。「医師にどんな質問をすれば要領よく診察が受けられるかを知り、なるほどと思った」。学習面で困ったときは同センターに電話をし、職員にインターネットの操作方法を尋ねたり履修科目の登録を手伝ってもらったりした。

 計127単位を取得し、手にした卒業証書。室崎さんは「自分だけではできなかった。周りの支えも大きかった」と感謝した。さらに深く心理学を学びたいと放送大学で学習を続ける。

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