熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断

コロナ給付金、不正受給への取組みを徹底せよ

 新型コロナウイルスの持続化給付金の不正受給が後を絶たない。

 持続化給付金は、新型コロナで収入が50%以上減少した中小企業に最大200万円、個人事業主に最大100万円を支給する制度である。

 現在、中小企業庁には全国の警察から不正受給に関する膨大な問い合わせが来ており、警察は不正受給の指南役を始め、関与した学生、会社員、市職員などを全国各地で次々と逮捕している。

 先日も、警視庁が、約100人に虚偽申請を指南し総額1億円を詐取したとして松山市の男ら3人を詐欺容疑で逮捕した。都内の会社員を個人事業主だと偽り、コロナの影響で収入が減ったとする虚偽の売上台帳や確定申告書を作成し、インターネットで申請して持続化給付金100万円をだまし取った疑いである。

 また、愛知県警が摘発した事件は、学生や会社員ら400人以上が虚偽申請に関わり、被害は4億円に上る可能性があるという。

 これらの事件は氷山の一角である。

 SNS上には「申請代行」「成功報酬」をうたう書込みが並び、顧客を集めて高額な手数料を貪(むさぼ)る輩が跋扈(ばっこ)している。

 給付金を受け取るには、中小企業庁に、確定申告書類、コロナの影響で収入が減少したことを示す売上台帳、身分証明書の写しなどを提出する必要があるが、運転免許証のコピーなどがあれば、虚偽の確定申告や売上台帳で簡単に給付申請ができる仕組みになっている。

 中小企業庁は「性善説」に立ち、「明らかに不正な点がない限り、本人に問い合わせたりすることはない」と言う。

 しかし、いかにコロナ禍とはいえ、予算規模5兆円を超える大切な公金を給付するには、あまりにもお粗末な制度設計と言わざるを得ない。システムや現場対応を民間業者に丸投げしていることも不正が横行する一因である。

 国は、これ以上不正受給が横行しないよう、早急に過去の課税データを共有したり、調査を徹底するなどの対策を取るべきである。

 不正受給には、特殊詐欺グループなどの反社会的勢力や暴力団が関わっている可能性もある。逮捕立件は当然だが、だまし取られた給付金の回収をしっかりやらなくてはならない。

 仮に、暴力団が関わっているとなると、暴力団対策法による使用者責任の追及も視野に入れるべきである。暴力団対策法は、組員が暴力団の威力を利用して他人に危害を加えたり、財産を奪い取ったりした場合、組織のトップらも賠償責任を負うと定めている。

 特殊詐欺事件(振り込め詐欺、オレオレ詐欺)などでは、組員が被害者に直接威力を振るわなくとも、共犯者集めなど犯罪実行までの過程で威力を利用していれば使用者責任が生じる。組員が暴力団員として恐れられていることを利用して「受け子」を集めたような場合である。

 しかし、コロナ給付金の不正受給の場合、果たして「暴力団の威力を利用した」と言えるだろうか? 組織のトップに賠償責任を負わせるのは、なかなかハードルが高そうである。回収は容易ではない。

 往々にして、公金が暴力団や反社会的勢力に流れた場合、具体的な被害者がいないことから、国による責任追及や回収作業がうやむやになりがちである。

 大切な公金がだまし取られているのであるから、国は「被害者は国民である」ことを肝に銘じて、あらゆる手段を駆使して被害の回復を図らなければならない。

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【プロフィル】堀内恭彦

 ほりうち・やすひこ 昭和40年、福岡市生まれ。福岡県立修猷館高校、九州大学法学部卒。弁護士法人堀内恭彦法律事務所代表。企業法務を中心に民事介入暴力対策、不当要求対策、企業防衛に詳しい。九州弁護士会連合会民事介入暴力対策委員会委員長などを歴任。九州ラグビーフットボール協会理事(スポーツ・インテグリティ担当)、元九州大学ラグビー部監督。