【ワシントン=黒瀬悦成】新型コロナウイルスへの感染が判明したトランプ米大統領が2日、ワシントン近郊の医療センターに入院したことで、トランプ政権は大統領の症状が悪化し職務の遂行が困難になった場合に備え、ペンス副大統領が大統領代行を務める事態を視野に入れ始めた。
世界一の超大国として自由世界を率いる米国の大統領は、核兵器使用権限を握る米軍最高司令官であり、その動向は世界の安全保障に重大な影響を及ぼす。
合衆国憲法修正25条の規定では、大統領自身が職務上の権限や義務を遂行できないと判断した場合、上下両院への書面通告を経て副大統領が大統領代行に就く。また、大統領が心神喪失などで自発的に職務を委譲できない場合、副大統領以下の高官による閣議で過半数が同意し、上下両院に通告すれば、副大統領が大統領の職務を代行する。
また、仮にペンス氏も感染して職務を続けるのが困難になった場合は、大統領職の継承順位に基づき、トランプ氏と対立関係にある民主党のペロシ下院議長が大統領代行になる事態も想定される。
ペンス氏とペロシ氏は2日現在、ウイルス検査で陰性が確認されている。
ペンス氏は2日、トランプ氏が参加するはずだったホワイトハウスでの新型コロナ関連の電話会合に代理で出席した。ただ、メドウズ大統領首席補佐官は記者団に「大統領は自身の職務を続行している」と述べ、ペンス氏への職務委譲は行われていないと強調した。
米政権が強く警戒するのは、中国がロシアなどがトランプ氏の感染に乗じて大統領選への干渉行為や、米軍の即応態勢を試す挑発行動を仕掛けてくることだ。
国防総省のホフマン報道官は2日、トランプ氏の感染を受け「米軍の即応態勢や能力に変化はない。指揮管制系統も一切影響を受けていない。警戒水準にも変更はない」と発表した。