横浜市、増える隠れ待機児童 「保留」3421人、対策強化に腐心 

 厚生労働省が今秋発表した今年4月1日時点の全国の待機児童数は、前年比4333人減の1万2439人。横浜市も2年連続減少の27人となり、市は「引き続きゼロを目指す」としている。一方、市内では希望する園に入れなかったなどの「保留児童数」は年々増加し、3421人に。女性の労働人口増加と、育児休業制度をめぐる保護者らの事情が数字を押し上げているという背景もあるなか、市は希望通りの入園が実現する環境を整えるべく、的確な保育需要の把握に腐心している。(外崎晃彦)

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 横浜市の過去5年の待機児童数は、平成28年が7人、29年は2人だったが、国が待機児童数に関わる調査要領を改正し、育児休業中の保護者の集計方法を変更したため、30年は63人に急増。市はその後、受け皿整備などを進め、31年は46人、令和2年は27人に減少した。

 ◆「育休延長」で申請

 林文子市長は定例記者会見で「なかなかゼロにはならない」と苦渋の表情を浮かべつつも、「保育需要が増える中で27人というのは本当に頑張った結果だと思う」と述べ、待機児童対策の成果を強調した。

 待機児童数が減少する一方で隠れ待機児童とも呼ばれる「保留児童数」は増え続けている。横浜市で令和2年は7万1933人が利用申請し、6万8512人が入園したことから、その差の3421人が「保留児童」となった。平成30年は3080人、31年は3231人と、年約200人のペースで増えている。

 ただ、市は「保留児童数は増えているが、全て『入園できず困っている人』というわけではない」と説明。理由として、保留児童数に「育児休業関連」が含まれることを挙げている。

 育休関連は、育休中の保護者が、子供が入園できなかった場合に、育休をさらに1年間延長できるという制度にのっとり、育休取得目的で入園申請した人など復職の意思が確認できない人を計数している。

 保護者の中には、「あえて入りにくい園を希望して育休を延長するケースも少なくない」(関係者)ことから、保留児童数を引き上げ、実需を見えづらくさせているという実態がある。市では、申請書にチェック項目を設けるなどして、令和2年は859人が育休取得目的だったことを突き止めたという。

 ◆希望かなわず負担増

 女性の社会進出拡大による申請のほか、育休延長目的の申請も年々増えるなか、市担当者は「保留児童数のなかでも、希望通りの園に入れなかった数は減っている」と分析している。

 ただ、育休関連を差し引いても、2千人を超える人が「希望とは別の園に入れることになった」や「第1希望の施設に入れずに諦めた」など、結果的に「希望通りの園に入れられなかった」のも現実だ。

 保護者らの「希望」は、自宅近くや通勤途中の園に入れたい▽勤務状況に合う保育時間帯で預かってもらえる園に入れたい▽保育方針やサービスが気に入った園に入れたい▽認可保育園に入れたい▽保育料の安い園に入れたい-などだ。

 なかでも、「自宅近くや通勤途中の園に入れたい」という希望については、実現できないことで、通勤途中に遠回りしなければならないなどの負担を強いることになるため、行政担当者らも深刻な問題と受け止めているという。

 市は「当事者の保護者らにとっては、大きな問題。単純に、どこかの園に入れられたからいいといって片づけられる問題ではない」(担当者)として、対策を進めているという。園の利用申請数が増え続ける一方で、市の就学前児童数は少なくとも10年以上前からすでに減少傾向に転じており、市の担当者も「申請数もいずれ必ずピークを迎える。このまま園を新規に作り続けていればよいという状況ではない」と語る。

 既存施設の活用に加え、需要の的確な把握にも努めるなど、市は待機児童対策をめぐる難しいかじ取りを迫られている。

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 ◆保育需要に地域差も

 保留児童や待機児童を生む要因として、地域による保育需要の偏りや、受け皿整備の偏りも指摘されている。横浜市の区別の保留児童数は、港北区(447人)▽戸塚区(380人)▽神奈川区(248人)-などで多く、瀬谷区(114人)▽金沢区(115人)▽泉区(121人)-などでは少ない。

 こうした地域差について、市は工場跡地などの大規模な宅地開発により、子育て世帯などが流入し、人口が増えている地域では、保留児童が多い傾向があると分析。「地域の偏りを念頭に、集中的に受け皿を確保するなど、対策を進めていきたい」(市担当者)としている。

 また、市は新型コロナウイルス感染拡大による令和3年4月に向けた保育所整備への影響を考慮し、事業者からの整備相談が少なかった西、戸塚両区内の一部エリアについては開所前の賃借料補助を拡充するなどして整備推進を行っているという。

【用語解説】保留児童数

 園の利用申請者数と、入園した児童数の差。「隠れ待機児童」とも呼ばれている。横浜市の令和2年の保留児童3421人のうち、大部分を占めるのが、横浜保育室など認可保育所以外の保育サービスを利用した「横浜保育室など入所数」(661人)▽育児休暇取得目的で申請した人など復職の意思が確認できない「育児休業関連」(1265人)▽第1希望のみの入園しか望んでいないなどの「特定保育所などのみの申込者」(1254人)-の3項目。「育児休暇関連」が、保留児童数を押し上げている要因の一つとして挙げられている。

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