鑑賞眼

シアターコクーン「十二人の怒れる男」 

少年の有罪に疑問を投げかける陪審員8番(テーブル奥側の右端、堤真一)に対する反応は様々だ(細野晋司撮影)
少年の有罪に疑問を投げかける陪審員8番(テーブル奥側の右端、堤真一)に対する反応は様々だ(細野晋司撮影)

 たとえ結末を知っていても、緊迫した会話劇はいつの時代だって面白い。

 ある少年の父親殺しの裁判で、陪審員として集まった、背景も年齢もバラバラな12人の男たち。少年が死刑なのか無罪なのかを全員一致で評決しなければならない。法廷に提出された証拠や証言は少年に不利なものばかりで、陪審員の大半が有罪を確信していたが…。

 リンゼイ・ポズナー演出。イギリスからリモートでカメラ越しに演出する形で稽古が進んだという。原作はアメリカの脚本家レジナルド・ローズが陪審員を務めた実体験をもとに描いたテレビドラマ。ヘンリー・フォンダ主演の同名映画(1957年)はあまりにも有名だ。

 古い時代の作品だが、ディスカッション・ドラマには、普遍的な魅力がある。近年とくに盛り上がりをみせている、人間に化けた狼を議論で炙り出す「人狼ゲーム」の即興劇なども、その系譜だろう。誰かが話すたびに明かされていく真実、それ以上に彼らの個性から目をそらせなくなる。

 評決を下すまで外に出られない密室を、観客席がアリーナのように取り囲む。照明と効果音だけで時間の経過を表現。審査員8番(堤真一)が疑問を投げかけ、審査員10番(吉見一豊)が怒鳴るたび、審査員3番(山崎一)が人格攻撃をするたび、空間の雰囲気が加速度的に重くなっていく。重さが飽和すると、観客からは泡のような笑いが起きる。

 考えを表明することは、人格を明かすことと同義だ。そしてそれに対する反応も。無機質な番号で呼ばれる陪審員たちは、会話を重ねることで、それぞれのキャラクターを確立していき、絶妙に「こういう人いる」というリアルな人物造形に成功した。議論の果てに、世界の解像度が上がっていく瞬間が心地よい。

 9月11日~10月4日、東京都渋谷区のBunkamuraシアターコクーン、03・3477・3244。(三宅令)

 公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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