《平成29年10月、神奈川県座間市のアパートで男女9人の切断遺体が見つかった事件で、強盗殺人や強盗強制性交殺人などの罪に問われた無職、白石隆浩被告(29)の裁判員裁判が30日、東京地裁立川支部で始まった》
《ツイッターに自殺願望を投稿するなどした若者が次々に犠牲になった凄惨(せいさん)な事件。白石被告は、ツイッターで自殺を望むような投稿をした若者と接触すると、「自殺を手伝う」などと伝えて自宅アパートに誘い出し、殺害したとされる》
《公判の争点は、被害者が殺されることを承諾していたかどうか。弁護側は、被害者が被告に殺害されることをあらかじめ「承諾していた」と訴える方針。一方の東京地検立川支部は、被害者の生前の言動から殺害を了承していなかったことを立証する見通しだ》
《犯罪史に刻まれる特異な事件。この日は一般傍聴席13席に対し、625人の傍聴希望者が集まった。事件は被害者が多く、地裁支部は傍聴席の3分の1のスペースを遺族ら被害者参加人に割り当てた。他の傍聴者から見えないよう、傍聴席には遮蔽版が設置されていた》
《午後1時半。法廷内の職員が、弁護人席の後ろに立ててあったパーテーションを開いた。上下緑色の作業着のような服を着た、白石被告が座っていた。背中まで伸びた黒髪はあちこちを向いて跳ねている。黒縁眼鏡に大きなマスクを付けており、表情はうかがえない。4人の刑務官が白石被告を囲んでいる》
《ほどなくして、裁判員や補充裁判員も入ってきた。いよいよ開廷する》
裁判官「開廷します。被告人は証言台の前に立ってください」
《白石被告がゆっくりと立ち上がる。緑色の服はしわが目立っていた》
裁判長「名前は」
白石被告「白石隆浩です」
裁判長「起訴状では住居不定となっていますがそれでいいですか」
白石被告「はい」
裁判長「仕事は」
白石被告「無職です」
《白石被告ははっきりとした声で淡々と答えていく。裁判長が注意事項を述べる。公判は、被害者の氏名などを伏せて審理できる「被害者特定事項秘匿制度」が適用され、全ての被害者に、アルファベットを用いた匿名呼称が用いられる》