九州正論懇話会

元本紙記者・阿部雅美氏が講演 「拉致問題、政府の尻たたき続けよう」

講演する元産経新聞記者、阿部雅美氏=29日、福岡市中央区(中村雅和撮影)
講演する元産経新聞記者、阿部雅美氏=29日、福岡市中央区(中村雅和撮影)

福岡市中央区の西鉄グランドホテルで29日に開かれた九州「正論」懇話会の第146回講演会では、元産経新聞記者の阿部雅美氏が「拉致事件の教訓~取材40年を振り返る」と題して講演した。北朝鮮による拉致事件について「新聞、テレビが報じなかったため、長く明るみに出ず放置され続けた」と、メディアの不作為を指摘。解決に向けて「政府の尻をたたき続けよう」と訴えた。主な内容は次の通り。

私たちは拉致事件に慣れすぎたように思う。日本の領土に不法に侵入した北朝鮮の工作員たちが、幸せに暮らす多くの日本人を、海を越えてさらっていった。北朝鮮がそれを認めたにもかかわらず、自国民を取り戻せない。極めて異常なことが今も続いている。

北朝鮮はひどい国だが、日本もまともな国ではなかったといわざるを得ない。メディアが作り出した偏った時代の空気、海の守りのお粗末さ、法律の不備などにより前兆を見逃し、結果として拉致を許してしまったからだ。

拉致事件には特異な側面がある。繰り返された犯罪そのものが長く明るみに出ず、明るみに出た後も放置され続けたことだ。横田めぐみさん=拉致当時(13)=の拉致疑惑が発覚した平成9年に事件の存在を知った人は多い。しかし、それより17年前の昭和55年に、最初に拉致の疑いを報じた産経新聞の記事で知った年配の方もいる。人により17年もの差があるのはなぜか。当時の新聞、テレビが報じなかったからだ。

私と拉致との関わりは昭和54年、「日本海の方で変なことが起きている」という、ある人のつぶやきを耳にしたのが始まりだ。調べてみると、富山県の地元紙に「海岸で散歩中の若い男女が4人組の男に襲われ、危うく助かって無事だった」という記事があった。

富山で取材をすると奇妙なことが次々に分かってきた。工業のひどく遅れた国で作られた多くの遺留品、精悍(せいかん)で奇妙な格好の訓練された無言の中年男4人組、被害者の証言。地元の警察署長は「犯人たちは袋に詰めた2人を車でどこかへ運ぼうとしたのでは」と言ったが、車ではなく船で目の前に広がる日本海の向こうへ連れていこうとしたのではないか。