国民の自衛官 横顔

(9)院内感染ゼロ、結束力で実現 自衛隊中央病院

病室へ入室するクルーズ船の乗客(自衛隊中央病院提供、画像の一部を処理しています)
病室へ入室するクルーズ船の乗客(自衛隊中央病院提供、画像の一部を処理しています)

 陸自三宿駐屯地(東京都世田谷区)にある自衛隊の中核医療機関。集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客をはじめ、これまでに約600人、新型コロナウイルスの患者を受け入れている。

 全力で治療に当たる一方、医療崩壊につながりかねない院内感染はゼロ。「院内感染を避けたいという意識、使命感、責任感が一人一人に働き、結果を出すことができた」。病院長の上部泰秀防衛技官(61)は胸を張る。

 「中国で原因不明の肺炎が発生している」との報道が広がり始めた1月初旬、チームではすでに、日本国内での流行を念頭に置いた綿密な情報収集が始まっていた。

 クルーズ船から患者の受け入れが始まると、医師・看護師らは毎日会議を開いて意識の統一を図り、各チームが適度な休養をとって戦力回復できる態勢を構築。忙殺の日々を乗り切れたのは、「常在戦場」の意識と自衛官としての強い結束力のたまものだった。

 当時の緊迫した日々について、第1内科呼吸器科医長の三村敬司1等陸佐(50)は「先の見えない状況こそ、任務を綿密に分析することで効率的なチームワークが生まれることを実感した」と振り返る。

 保健管理センター管理担当副長の佐藤陽子3等陸佐(51)も「どんな場面でも力が発揮できるような準備が大切。経験が生かされたことにやりがいを感じた」と語った。(王美慧)

=随時掲載

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