一服どうぞ

笑顔で接する「和顔施」 裏千家前家元・千玄室

かつて訪れた地へ再度、と思いつつも中々に忙しく足を運ぶことができない。ギリシャもそのような国の1つである。オリンピック発祥の地であることは周知の事実だが、世界遺産も多数あり、ギリシャ神話も興味深い。この世界遺産の中に、ペロポネソス半島東部の古代ギリシャの港湾都市・エピダウロスの遺跡が有る。

1万人以上の観客が収容できたという円形劇場で有名だが、それとともに、ここは医の神アスクレピオスの聖域で、今でいう医療施設の役割をする神殿があった。病人が快癒を願い祈った「癒やし」の場なのである。病人がアバトンという聖所で眠ると夢に神が現れ、治療法を告げたという。発掘された碑には病人の治癒実績が記されている。その中にヘビが患部をなめた夢を見ただけで治ったとされる病人もいる。

世界保健機関(WHO)のシンボルマークは、この医神アスクレピオスが持つヘビが絡みついた杖(つえ)なのである。

春に地中から現れるヘビは再生と不滅の象徴とされ、毒を消す力を持つ。いわゆる毒を以(もっ)て毒を制するのである。古代より人間は生存するために自然と関わり、他の生き物と共生する必要があった。現代社会は科学文明の発展を優先させ、自然共生をないがしろにし、破壊しているように思える。疫病が恐慌をもたらしているのは、天地創造し、人間を地に生かされた神々が、反省を促すための試練をお与えになっているのでは、などとも思うこの頃である。

とかく人間は自分本位で事(こと)を判じ、我(われ)だけは守られているという増上慢になる。

釈尊の教えには、基本をなす3つの「布施」がある。1には「無畏施(むいせ)」。これは、人から不安や恐怖を除き、無事平穏に過ごせるようにすることである。この無畏施はあまり世に知られていない。次の「法施」は主に僧侶に対してで、大切な法を説くには広い心で良心のあり方を知らねばならないのだが、中々に難しく理解し難い。

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