話の肖像画

エースコック社長・村岡寛(69)(5)√2からスーパーカップ

当時、開発現場を担当していたマーケティング部長の稲葉至のもと、担当の上田洋というのはどこまでも追究して仕上げる学校の先生か研究者のような男でした。この男が出してきたのが「ルート2の法則」。ルート2は1・41421356…。人間が違いをはっきり意識するのはルート2以上である。「ひとよひとよ…」を超えた差があると、人は心理学的に差を意識する、だから思い切って1・5倍にしましょう、と。そしてデジタル表示にする、と。これまでラーメン屋さんというのは大盛りとか替え玉はあっても、1・5倍といったデジタル表示はなかったんですね。

《昭和63年7月、満を持して市場に投入した新商品「スーパーカップ」。反応は分かれた》

コンビニエンスストアは「待ってました」と。自分たちのお客さんにはこれなんだというような反応でした。一方、1・5倍を見たとき、多くの小売店は「軽薄短小の時代に、砂場で幼稚園児が遊ぶバケツみたいな容器で誰が食べるか」と懐疑的な反応でした。これくらい感覚が違ったんですね。そんな商品は結構成功するのです。(聞き手 松田則章)

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