話の肖像画

エースコック社長・村岡寛(69)(5)√2からスーパーカップ

スパーカップは昭和63年度の「食品ヒット大賞」(日本食糧新聞社主催)に輝いた。贈賞式には常務だった村岡氏(左)が出席した
スパーカップは昭和63年度の「食品ヒット大賞」(日本食糧新聞社主催)に輝いた。贈賞式には常務だった村岡氏(左)が出席した

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《即席麺の魅力アップに、エースコックが出した答えは、従来のカップ麺の1・5倍の容量という「スーパーカップ」だった。アイデアは、社員のフリートークの中から出てきた》

いろんなアイデアが出ました。「味を牛肉味に」「もっと具材のでかいやつを入れる」「麺を太くする」…。そのうちのひとつが「麺の量を増やしたらどうだ」というものでした。そういうアイデアがいっぱい出る環境を、「創造ルーム」というところで作ったんですね。この部屋では、社長であろうが、開発の担当であろうが、マーケッターであろうが、役職、肩書抜きで自由にブレーンストーミングできる。その部屋で、「カップ麺に何が不足しているか」と議論し、出てきたアイデアのひとつが「もっとたくさん食べたい」でした。

《自身は当時、マーケティングの担当役員。「もっとたくさん食べたい」の検証を指示した》

マーケティング部の中に企画調査チームというのがありましてね。今のカップ麺が適量かどうかの調査をやりました。その結果、「適量」という結果が出たのです。増量のアイデアが否定されたわけです。ところが「いくらみんなが適量といっても自分には少ない。もっと食べたい」という開発担当者がいたんですよ。その担当は、今のカップ麺の1・5倍(90グラム)、これは袋麺の量ですが、その量が入る手作りカップを作り、もう1回調査しましょうと。その結果、1・5倍を食べた人の回答もまた「適量」でした。適量には範囲があるんですね。まずそれが分かった。

ではどうしたらいいか。当時は、テレビの画面が大型化された時代でした。たとえばプロ野球をみるとき、小さい14インチテレビでも、ピッチャーもキャッチャーもバッターも全部が映るわけです。それで十分分かるんだけれど、35インチのテレビで見ると迫力が全然違うんです。だから35インチのテレビで見ている人は、14インチのテレビで野球を見ると何かさびしい。物足りないと感じる。これかなと。1・5倍を食べてもらうためにはっきり違う容器にする。コンセプトを表現するような打ち出し方が必要ではないかと。