勇者の物語

力およばず 想像以上に大きな「壁」だった 虎番疾風録番外編76

V3を達成。胴上げされる巨人の川上監督=西宮球場
V3を達成。胴上げされる巨人の川上監督=西宮球場

■勇者の物語(75)

2連勝でつかんだ勇者の勢いは、東京からの移動日ですっかり消えていた。

10月28日、西宮球場のグラウンドは前夜からの雨でぬかるんでいた。逆に雨が降り続いていれば、雨天順延にして連投の足立を休ませることもできた。

◇第6戦 10月28日 西宮球場

巨人 012 500 100=9

阪急 000 012 000=3

【勝】城之内2勝【敗】梶本2敗

【本】高倉①(梶本)王②(足立)岡村①(城之内)スペンサー③(城之内)長嶋①(佐々木)

試合は前半で決着がついた。阪急の先発・米田が一回もたずに降板。2番手の梶本も二回に黒江の三塁打などで先制を許し、三回には高倉に2点本塁打。連投の足立を四回から投入せざるを得なかった。その足立に巨人打線が襲いかかる。

「右打者も左打者も足立のタマを引っ張ってはいけない。特に低めのタマは一見、打てそうだが引っ張ると打てない。どのタマも変化しているから、コースに逆らわないように打て」

前日のミーティングで巨人は〝足立攻略法〟をナインに徹底していた。

四回、先頭の土井が中越えに二塁打を放つ。柴田が四球で歩くと国松は三塁線へバント。これを処理しようとした足立がぬかるみに足を滑らせて尻もちをつく。無死満塁で長嶋。「初めから右方向を狙っていた」と右前へ2点タイムリー。ガックリときた足立のストレートを今度は王がバックスクリーン右へ、勝負あり-の3点ホームラン。

昨年の南海との日本シリーズに続いて3年連続の「日本一」。巨人・川上監督の巨体が何度も宙を舞った。

西本監督は一塁コーチスボックスからゆっくりと戻ってきた。ごった返すベンチをすり抜けネット裏へ。

「どうもすみません」と頭を下げた西本に「ご苦労さんでした」と小林オーナーが温かく言葉をかけた。

「悔いはないと言うたらウソになる。でも、選手に対しては何の文句もない。ようやってくれた。巨人とは力の差よりチームそのものが違った。巨人はチーム全体としての強さを持っている。その点でウチはまだ練習する余地を残している」。勇者たちにとって初めての巨人。それは想像以上に大きな「壁」であった。(敬称略)

■勇者の物語(77)

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