児童虐待~連鎖の軛 第2部②

生かしきれぬ情報 未然防止へ鍵握る市区町村 

網を広げる工夫

国の旗振りの下、今後支援拠点は増えていくとみられるが、支援拠点の課題は人材不足だけではない。伊藤さんの上司である長谷良子・子育て支援課長(51)=仮名=は「国から支援拠点の大枠の目的や役割は示されているが、具体的な運用は各自治体に任されている」と指摘する。長谷さんの自治体もこれから支援拠点を設置するが、「国が看板を掲げるだけで満足し、現場が運用方法を誤れば支援拠点も形骸化してしまう」と危機感を示す。

重要なのは、プライバシー保護などを理由に、各部署で抱え込まれがちな情報を、横断的に集約すること。児童手当や生活保護などの給付状況、保育園や小学校での様子から水道の使用状況まで、市区町村には家庭に関するさまざまな情報がある。それらは、家庭に潜む虐待リスクを見抜くための武器になるが、縦割りの行政組織では、情報を生かすことはできない。

すでに、長谷さんの自治体では、ひとり親家庭に給付される児童扶養手当の運用の工夫によって、虐待への「網」を張っている。

手当の更新月の8月、家庭の相談・支援の担当者が連絡が取れない家庭を事前に選別し、給付の窓口担当の職員にリストを渡す。手当の申請や延長は、親が必ず区役所を訪れて書類を提出しなければならず、リストに記載されている親が窓口を訪れれば知らせてもらう。

職員がリスクを抱える家庭に接触する機会を作る仕組みによって、伊藤さんが笠松さんに気付けたようなケースを漏らさずすくえるようになる。「経験豊富な職員が大勢いれば個人の能力でカバーできるが、市区町村には人材が不足している。現時点では、それを踏まえて仕組みづくりをしなければならない」と長谷さんはいう。

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