児童虐待~連鎖の軛 第2部②

生かしきれぬ情報 未然防止へ鍵握る市区町村 

中でも子育てに関する手当は問題を抱える家庭にとって重要度が高く、たとえ行政との間にわだかまりがあっても、親の方から受給を断ち切る可能性は低い。笠松さんがまさにそのケースで、最悪の事態を防いだ格好となった。

ただ、児相勤務の経験がある職員が窓口でたまたま知っている母親を見かけ、動いた結果でもある。必要なのは、「偶然」と「個人の資質」に頼らずとも機能する未然防止の仕組みだ。

その一つの形として、平成28年の児童福祉法改正では、市区町村に「子ども家庭総合支援拠点」を新たに整備することが努力義務として盛り込まれた。

虐待をめぐっては本来、住民に身近な市区町村が家庭を支援する中で、比較的軽度の事案に対応し、生命の危険もあるような事案には、より専門性の高い児相があたるという形が理想。しかし、市区町村の体制の脆弱(ぜいじゃく)さから児相に業務が集中してしまっているのが現状だ。

そこで、支援拠点を設置して市区町村の体制を強化した上で、日常的な家庭支援に加え、各家庭の実情を把握することで虐待を未然に防ぐ「予防的アプローチ」を兼ね備えることが想定されている。深刻な事案に対応する児相との役割分担を明確にすることで、児相の負担減も狙う。

子供の人口に応じ、保育士や社会福祉士の資格を持った専門員を一定数常駐させることが設置条件。厚生労働省は令和4年度までに全約1700市区町村での設置を目標に掲げるが、人材確保も壁になり平成31年4月時点で、283市区町村にとどまっている。

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