世界の論点

露の反体制派指導者 毒殺未遂 欧州で対露制裁論が浮上

欧州 ガス依存…揺れるドイツ

欧州連合(EU)では対ロシア制裁の可能性が浮上する。9日付フランス紙ルモンドは「EUの結束を問う試練」と位置づけ、EU議長国のドイツの対応に焦点を当てた。ドイツ外交はロシアとの対立を嫌い、「政治と経済は切り離せるという幻想に生きていた」ため、強硬姿勢には及び腰だと紹介した。

メルケル独首相は2日、事件について、ナワリヌイ氏の口封じを狙った毒殺未遂だと明言。「ロシア政府は疑問に答えよ」と迫り、制裁も辞さない立場を示した。EUでは、ロシア-ドイツ間海底パイプライン「ノルドストリーム2」の建設凍結を求める声が出ている。露産天然ガスを欧州に輸出する巨大ルートで、2年前に着工した。

だが、ドイツでは建設凍結に反対論が強い。世論調査では55%が「建設を止めるべきではない」と答えた。独国際放送ドイチェ・ウェレ(電子版)は14日、「政府は経済制裁を考えているが、効果はあるのだろうか」と疑問を示した。北朝鮮の核・ミサイル開発、シリアやベネズエラの反体制派弾圧に対し、国際社会は制裁を科したが、いずれも成果に乏しいと指摘した。

政治サイト「ポリティコ」欧州版は10日、「なぜ、ドイツはノーと言えないのか」との見出しで、建設凍結に踏み切れない背景には、環境重視のエネルギー政策があると論じた。「ドイツは電源の14%を原子力、30%を石炭に頼ってきた。だが、2022年に原発を廃止し、38年には石炭火力発電も止めると決めた。温室効果ガス排出を『50年に実質ゼロ』とする目標実現のため、天然ガスは不可欠になった」と指摘した。

ドイツだけではない。EUは、天然ガス輸入の40%をロシア産に頼る。欧州最大級のガス田を持つオランダは、環境への配慮から、採掘を22年に停止すると発表しており、欧州でロシア産の重要度は増している。ノルドストリーム2の建設にはロシアやドイツのほか、オランダやフランス企業が参加する。

建設には以前から、国際社会の風当たりが強かった。米トランプ政権は「欧州エネルギーのロシア依存は、米欧安全保障を損なう」と批判し、参加企業に制裁を発動。EU内でも、ロシアを警戒するポーランドは建設に反対してきた。それでも、建設は続き、工事の9割は終了した。

独首相府の報道官は対露制裁の可能性について、「現状でははっきりしない。数カ月内、あるいは年末までにやる、という話ではない」と述べた。プーチン露大統領は「来年春には完工する」との見通しを示している。(パリ 三井美奈)

≪ポイント≫

・露紙は事件による欧州と米国の接近警戒

・露世論はプーチン政権に打撃との見方

・EUでは対露経済制裁の可能性が浮上

・制裁はエネルギーの対露依存が制約要因

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