話の肖像画

エースコック社長・村岡寛(69)(1)従業員に支えられて

エースコック社長、村岡寛さん(沢野貴信撮影)
エースコック社長、村岡寛さん(沢野貴信撮影)

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《新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出され、スーパーの即席麺コーナーから商品が消えた。経営理念に掲げる「『食』を創る仕事を通して社会に貢献する」が試された》

「巣ごもり需要」で急激に即席麺、特に袋麺のニーズが高まりました。食品を供給するのが使命ですから、5月の連休まで工場の従業員には残業と休日出勤に協力してもらって、供給を絶やさないようにしようと。大阪では特に「ワンタンメン」のニーズが高まって、休みを返上して製造しました。工場の従業員の女性は小学生くらいの子供さんをお持ちのお母さんが多いのですが、子供さんは学校が休みで家にいるのにお母さんは出ていかないといけない。しかも残業せざるを得ない。これに、みなさんよく耐えて協力していただいた。子供さんたちからはずいぶん恨まれたと思います。こうして商品の供給はしっかり義務を果たせました。実際、即席麺はどこのメーカーも商品在庫がなくなったのですが、その中では比較的、エースコックの供給は良かったんじゃないかと思います。

《平成6年に社長就任、在職26年と長期に及ぶ。「スーパーカップ」「スープはるさめ」などのヒット商品を生み出し、ベトナムやミャンマーに進出して業績を飛躍的に発展させた》

私がやれたことはほとんどないんです。従業員や協力者一人一人がやってくれた。社長に就任したとき、すでに先代は病気が進み、かなり不自由になっていました。使命感だけで社長を拝命してやりましたので、右往左往しているように見えたかと思います。ボーナスの支給時に、感謝の気持ちから、従業員に対して「ボーナスを出させてもらってありがとう」といって、不思議に思われたことがあります。最初のころには業績も低迷しますし、みなさんに迷惑をかけた。そういう中で、みなさんに支えられて成果が上がったのだと思います。

《エースコックで思い浮かぶのは「ブタ、ブタ、コブタ…」のコマーシャルソングと「こぶた」のキャラクター。そのキャラクターのモデルは子供時代の村岡社長とされる》

ブタというのは繁栄のシンボルで、イメージしていたのはデンマークの子だくさんのブタですね。それをかわいらしくしようということで「こぶた」。自分がモデルかは分かりませんが、これは財産ですね。いまだに「ブタブタコブタ…」と歌うとスッと分かってもらえます。(聞き手 松田則章)

【プロフィル】村岡寛

むらおか・ひろし 関西学院大経済学部卒。昭和50年にエースコック(本社・大阪府吹田市)入社。平成6年に創業者で父親の慶二氏の後を継ぎ、2代目社長に就任した。エースコックの国内外を合わせた総売上高は956億円(令和元年12月期)、従業員は約6700人。今年5月から2度目の日本即席食品工業協会理事長を務めている。家族は妻と子供3人。

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