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『NIPPER』世界で愛されるロゴの物語 クリエイティブ・ディレクター・佐藤可士和

【本ナビ+1】『NIPPER』世界で愛されるロゴの物語 クリエイティブ・ディレクター・佐藤可士和
【本ナビ+1】『NIPPER』世界で愛されるロゴの物語 クリエイティブ・ディレクター・佐藤可士和
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 ■『NIPPER -His Master’s Voice-』石浦克 作・絵、バルコ香織 文(JVCネットワークス・1600円+税)

 クリエイティブ・ディレクターとして、いろいろな企業やサービスのロゴマークをデザインしている僕は、子供の頃からロゴが大好きだった。商品やパッケージに付いている小さなロゴから、その先に広がる大きな世界を感じ、イメージを膨らませるのがたまらなく楽しかったのだ。

 特に気になっていたロゴのひとつが、当時好きだったピンク・レディーのレコードでいつも見ていたビクターのロゴ。なぜ蓄音器の前に犬が座っているのだろう?と不思議で、あれこれ想像していたのを覚えている。そんなビクター犬「ニッパー」の、ロゴ誕生のエピソードが絵本になったと聞いて早速手に取った。

 ニッパーの原画は1889年に英国の画家、フランシス・バラウドによって描かれたものという。兄が世を去った後、その愛犬ニッパーを引き取って育てていたフランシスはある日、蓄音器でかつて吹き込まれた兄の声をニッパーに聞かせた。耳を傾けて、なつかしそうに主人の声に聞き入るニッパー。その姿に心を打たれた画家は一枚の絵に描き、「His Master’s Voice(ご主人さまの声)」とタイトルをつけて発表したそうだ。そして、この絵に感銘を受けた円盤式蓄音器の発明者、ベルリナーが1900年に商標として登録。やがて世界中の人々から愛されるロゴとなった-。

 この実話を背景に、人間と犬との長きにわたる絆、家族の愛の物語としてアレンジしたのが本作だ。家族や愛する人、かけがえのないペットへの感謝の気持ちがやわらかく溢(あふ)れ出す。何より、幼い頃から印象深かったロゴとこのような再会を果たせたことが嬉(うれ)しい。

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