放射性廃棄物でつくる人工ダイヤモンドが、数千年もつ電池になる:革新的な技術への高まる期待と現実

電池の原料は、ほぼ無尽蔵?

スコット率いるブリストル大学の研究チームは、炭素14のメタン同位体から人工ダイヤモンドをつくり出している。特殊な反応装置を使ってメタンと水素をプラズマ化すると、分解したメタンの炭素14が積層化してダイヤモンドの結晶ができあがる。

スコットたちのダイヤモンド電池は、一般的なベータボルタ電池のように半導体で放射性物質を挟み込む「サンドイッチ構造」ではない。放射性ダイヤモンドを通常の炭素原子の人工ダイヤモンドに混ぜ込んだかたちになっている。こうすることで、ベータ粒子の移動距離を短くし、電力への変換効率を最大化するのだ。Arkenlightのボードマンは、「ベータ粒子を電気に変えるダイオードと放射性物質は別々になっていましたが、この電池は画期的です」と話す。

炭素14は、宇宙線が大気に入射する際にできる中性子と大気中の窒素との化学反応によって生じる。一方で、原子力発電所で原子炉の減速材に使われる黒鉛ブロックからも生成される。原発の黒鉛ブロックは使用後に放射性廃棄物となるが、ボードマンによると英国だけでも10万トンの黒鉛廃棄物が存在する。

こうしたなか英国原子力公社(UKAEA)は、やはり原子力電池の放射能源として使えるトリチウムを、放射性黒鉛35トンから回収している。ArkenlightはUKAEAと協力し、黒鉛廃棄物から炭素14を分解回収する方法を模索している。

UKAEAの試算では、炭素14が100ポンド(45.4kg)程度あればダイヤモンド電池が数百万個はつくれるという。つまり、黒鉛廃棄物からの回収に成功すれば、電池の原材料がほぼ無尽蔵に入手できることなる。さらに、炭素14を取り除くことで黒鉛ブロックの放射能レベルが下がって低レベル廃棄物に変化するため、取り扱いや貯蔵が容易になる。

 放射性廃棄物の貯蔵施設から出るガンマ線を電力に変換するガンマボルタ電池の試作品。

宇宙産業や原子力産業が関心

放射性廃棄物から取り出した炭素14を利用したダイヤモンド電池の試作品はまだ完成していない。実用化には、数年かかる見通しだ。

それでも、すでに宇宙産業や原子力産業が関心を寄せており、Arkenlightは欧州宇宙機関から通信衛星に搭載される信号装置向けのダイヤモンド電池の開発を受注している。装置は微弱な無線信号を発することで個々の衛星の識別を可能にするためのもので、ボードマンはこれを「衛星のRFIDタグ」と呼ぶ。

Arkenlightはダイヤモンド電池だけでなく、放射性廃棄物の貯蔵施設からガンマ線を利用する電池の開発にも取り組んでいる。また、原子力電池の実用化を目指す企業は、Arkenlight以外にもたくさんある。例えば、米国では以前からCity LabやWidetronixといった企業がトリチウムを使ったサンドイッチ構造のベータボルタ電池の商用開発を続けている。

コーネル大学の電気工学教授でWidetronixの共同創業者でもあるマイケル・スペンサーは、原子力電池は用途を考えた上で放射性物質を選ぶ必要があると指摘する。例えば、炭素14はトリチウムと比べてベータ粒子の放出量が少ないが、半減期はトリチウムの500倍以上だ。つまり、寿命の長い電池が必要なら最適だが、同量の電力を供給したい場合、サイズはトリチウムを使った電池よりはるかに大きくなる。スペンサーは「同位体を選ぶときには、さまざまなトレードオフを考えなければなりません」と言う。

原子力電池はかつては傍流の技術だったが、最近になって注目されつつある。数千年の寿命を必要とする電池は全体のごく一部だが、今後はとてつもなく長い期間にわたって電力を供給しなければならない場合でも選択肢があるようになるだろう。

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