放射性廃棄物でつくる人工ダイヤモンドが、数千年もつ電池になる:革新的な技術への高まる期待と現実

電池より先に本体を交換する時代に?

ダイヤモンド電池が力を発揮するのは通常の電池を利用できないような状況で、例えば遠隔地や危険な場所であるため定期的なバッテリー交換が難しい場合が考えられる。具体的には、人工衛星や放射性廃棄物の貯蔵施設などだ。

一方で、心臓のペースメーカーやウェアラブルデバイスなど、もう少し身近な用途も想定されている。かなり先の将来には、電池より先にデバイスを交換するようになるかもしれない。ボードマンは「バッテリーはそのままで、火災報知器のほうを買い直す時代がやってくるでしょう」と語る。

身の回りに放射性物質がある状況を楽しめる人は少ないだろう。ただ、ベータボルタ電池の健康へのリスクは非常口のサインと同じ程度でしかない。非常口のサインの赤い色はトリチウムという放射性同位体が基になっており、微弱ではあるが放射線が出ているのだ。

放射線にはいくつかの種類があるが、ガンマ線のような電磁波とは違い、ベータ線は数mmの薄い板などで簡単にさえぎることができる。米エネルギー省の下部機関であるパシフィックノースウェスト国立研究所(PNNL)の科学者で材料科学を専門とするランス・ハバードは、「通常は電池の外装だけで十分です」と説明する。

ハバードはArkenlightにはかかわっていないが、「内部も放射線は微量で非常に安全です」と指摘する。また、自然崩壊が終わって放射線が生じなくなれば、電池の寿命も尽きる。

IoT機器の隆盛で注目

ベータボルタ電池は1970年代に発明され、当初はペースメーカーに使われていた。しかし、外装が破損するなどした場合に危険なことから、安価なリチウムイオン電池にとって代わられた。その後は特に使われることはなかったが、最近になって電子機器の省エネ化が進むなか注目されるようになっている。

ハバードは「マイクロワットやピコワットといった本当にごく微量の電力しか必要なければ、素晴らしい選択肢です」と言う。「モノのインターネットの流行は、原子力電池の復活における原動力になりました」

ベータボルタ電池は一般的に、半導体素子の間に放射性物質が挟まれた構造になっている。放射性物質は放射線崩壊の過程でベータ粒子と呼ばれる高エネルギーの電子もしくは陽電子を放出するが、これが半導体によって電気エネルギーに変換される。電池の仕組みは太陽電池に似ているが、ベータボルタ電池では半導体は光子ではなく、ベータ粒子を電力に変えるのだ。

また、太陽電池と同様に原子力電池の発電量には上限がある。放射線物質と半導体素子の距離が広がれば電力密度は低くなるので、電池の厚さが数ミクロンを超えると容量は大きく低下する。さらに、ベータ粒子の進む方向はばらばらで半導体素子はすべてを捉えることはできず、電力に変換されるのはその一部だ。

ハバードはベータ粒子から電力への変換効率について、最先端の技術を使っても7パーセント程度だと説明する。変換効率は理論的には最大37パーセント程度なので、まだ改良の余地はある。

ここで登場するのが、「炭素14」と呼ばれる放射性同位体だ。炭素14は考古学試料などの年代を調べる手法のひとつである放射性炭素年代測定に使われることで知られ、放射能源になると同時に半導体素子の役割も果たす。半減期は5%2C730年だ。文字の歴史は5%2C000年ほど前にさかのぼるとされるが、炭素14を使った原子力電池は人間が文字を使ってきた時間より長い期間にわたって電力を供給できる計算になる。

会員限定記事会員サービス詳細