多摩川の源流部にある山梨県小菅村の玉川養魚場がヤマメを生きたまま発送する通販事業を始め、好評だ。オーナーの横瀬徳義さん(59)によると、ヤマメを卸していた飲食店などが新型コロナウイルス感染拡大で休業になり、「池がヤマメであふれそうだった」のがきっかけだが、「小菅村を知ってほしい」と当分続けるつもりだ。(渡辺浩)
毎年6万匹孵化
ヤマメは、サケ科のサクラマスのうち海に下らずに川魚として生きる個体。美しい流線形で、オリーブ色や虹色の体から「渓流の女王」と呼ばれる。
小菅村の住民が昭和40年、民間で初めてヤマメの人工養殖に成功。横瀬さんの父は49年にキャンプ場を開設した後、ヤマメ養殖のノウハウを学んで養魚場も始めた。
毎年約6万匹が孵化(ふか)。清流「玉川」の水を取り込んで育てたヤマメは評判がよく、村内の管理釣り場や道の駅、東京都八王子市や奥多摩町の有名そば店などに出荷している。
「多摩源流」をキャッチフレーズにしている小菅村が玉川養魚場に「多摩源流のヤマメ」の名称使用を許可したほか、道の駅こすげではヤマメのアンチョビなどの新商品を開発し、特産品としてPRしている。
刺し身もOK
ところが今年春以降、新型コロナの感染拡大で飲食店などが休業し、玉川養魚場の出荷量は例年の2割まで激減。養殖池が「密」になってきた。
横瀬さんは村の若者らと相談し、8月中旬から通販を始めた。生きたままのヤマメと水を入れた大きなポリ袋に酸素を充填(じゅうてん)。山梨と関東地方限定で金曜夕に冷蔵便で発送し、土曜午前に到着する。
3匹2650円(税込み)、5匹3400円(同)で、これまでに100セット以上発送した。輸送状態によっては到着までに弱ることもあるが、新鮮で、養殖のため寄生虫がおらず、刺し身でも食べられるという。
客からは「鮮度がよく、おいしかった」という感想のほか、「生きていたので、子供が楽しそうに観察していた」という声も寄せられている。