組子で北斎の名画再現 足利の建具職人、渡辺さん

渡辺勝寿さんが5年がかりで仕上げた組子細工の屏風「神奈川沖浪裏と漁師」
渡辺勝寿さんが5年がかりで仕上げた組子細工の屏風「神奈川沖浪裏と漁師」

 江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の代表作「神奈川沖浪裏」を題材に、栃木県足利市山下町の建具職人、渡辺勝寿さん(80)が組子細工のびょうぶを仕立てた。縦1・9メートル、横5メートルの壮大な作品で、職人技を駆使した5年がかりの労作。北斎と足利との関わりを探る市民団体は、渡辺さんと連携して利活用の方法を検討することにしている。

 渡辺さんは建具製造業「ワタモク」の4代目で、中学卒業後に職人の道に入り、障子などの建具作り65年のベテラン。20年前、妻の多恵さん(83)の病気を機に一線を退いて「組子細工を極めよう」と専念し、精緻を極めた衝立、灯籠、びょうぶなどを手掛けている。

 神奈川沖浪裏は「富嶽三十六景」の中の1枚で、世界的に人気の高い名作だ。渡辺さんのお気に入りの1枚でもあり、5年前から、組子細工による再現に取り掛かった。原画を基に設計図を書き、ヒノキ材の部材約10万個を一つ一つ手作業で加工、こつこつと仕上げていった。毎日10時間近く作業に打ち込んだという。

 右側には、漁師が投網する様子を独自に加えた。曲線を駆使した投網部分の加工は特に難しく、渡辺さんは鹿沼市在住の鹿沼組子の名人宅に約2年間、25回ほど通い詰めて技法を学び、特に加工が困難とされる秋田杉で制作した。

 完成したびょうぶは障子6枚分の大きさで、「神奈川沖浪裏と漁師」と名付けた。渡辺さんは「まだまだ完全じゃない、80点かな。でも、よく完成にこぎつけたと思う」と笑みを浮かべた。

 足利での作品として北斎は、錦絵「足利行道山くものかけはし」や、「北斎漫画」で行道山浄因寺(同市月谷町)のスケッチなどを残している。

 こうした北斎と同市の縁を探っているのが、市民団体「緑がおいしい北の郷探偵団」(中島昇会長)。今回完成した渡辺さんの作品を展示しようと話し合っている。中心メンバーの中島太郎さん(57)は「大変な労作。広く市民に鑑賞してもらう機会を作りたい」と意気込んでいる。(川岸等、写真も)

会員限定記事会員サービス詳細