【ニューヨーク=上塚真由】国連のグテレス事務総長は9日、オンラインで産経新聞など日本メディアとの会見に応じ、新型コロナウイルスの感染拡大で8月の広島訪問を断念したことについて「とても失望している」と述べた。その上で「来年は広島を訪問できるよう望む。軍縮は国連創設以来の優先事項だ」と表明し、広島、長崎への原爆投下から75年の節目に核軍縮への決意をアピールした。
グテレス氏は過去の被爆者との面会で「彼らの力強さや勇気、立ち直る力に深く感銘を受けた」と述べ、「世界は彼らに借りがある。軍縮に向けてより効果的に取り組まないといけない」と強調した。
来年2月に期限切れを迎える米露の新戦略兵器削減条約(新START)については、トランプ米政権が中国の参加を求めていることを念頭に「新STARTは中国がどうであろうとも延長すべきだ」と強調。その一方で、「全ての関係国が関わる核軍縮の広範な枠組みが非常に重要だ」とも指摘した。
グテレス氏はまた、新型コロナ禍などで国際社会の「脆弱(ぜいじゃく)性」が露呈したと指摘。米中の対立激化で「世界の経済が2つに分断され、衝突を生む危険性がある」などと訴え、「全ての国が尊重できるルールを見つけるために、米中だけでなく欧州や日本など他の国を巻き込み真剣に交渉することが重要だ」と述べた。
辞任を表明した安倍晋三首相については、「国連と多国間主義に対する強い貢献に深く感謝したい」と表明。気候変動の分野で日本の自治体や企業が積極的に取り組んでいることに触れ、「日本は主導的な役割を果たすことができる」と期待感を示した。