尖閣中国漁船衝突10年 「政府関与」裏付けた前原氏証言 教訓に尖閣対応強化を

尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船「みずき」に衝突する、中国漁船=平成22年9月7日(動画投稿サイト「YouTube」から)
尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船「みずき」に衝突する、中国漁船=平成22年9月7日(動画投稿サイト「YouTube」から)

 10年前の尖閣諸島中国漁船衝突事件で、当時の民主党政権は中国人船長の処分保留による釈放が「検察独自の判断」だと繰り返し強調し、政府の関与を否定し続けてきた。政権中枢の一人だった前原誠司元外相がそれを覆す証言をした意味は大きい。

 これまでも船長の釈放が「政権の意思」だとの証言はあった。官房長官だった仙谷由人氏(平成30年死去)は25年9月、産経新聞の取材に、菅(かん)直人首相の意向も踏まえ船長を釈放するよう法務・検察当局に水面下で政治的な働きかけを行っていたと明らかにした。

 仙谷氏と親しく、事件直後に内閣官房参与に就いた評論家の松本健一氏(26年死去)も23年9月に「官邸側の指示で検察が動いた」と明かしていた。

 前原氏が今回、菅氏から直接聞いた話を明らかにしたことで、こうした証言が裏付けられた。処分保留、しかも勾留期限前の船長釈放に政権の中国に対する過剰な配慮があったことになり、検察の判断に及ぼした影響は否定できない。

 政権は検察に責任を押し付け、国民に虚偽の説明をしていたことにもなる。事件はうやむやなまま現在に至っている。

 何よりも深刻なのは「日本に強く出れば引っ込む」との印象を中国側に抱かせたことだろう。現に尖閣諸島を含む東シナ海への中国の軍事進出はその後加速し、「法の支配」を無視した行動は激化している。

 安倍晋三首相は尖閣諸島の実効支配強化のため海上保安庁の巡視船増強といった措置をとってきた。しかし、尖閣では今も軍の指揮下にある中国海警局の船がほぼ連日、接近している。領海侵入も繰り返し、「自国の領海」と堂々と主張する事態は変わっていない。

 対応を誤れば将来に禍根を残す-。16日に発足する新政権は10年前の教訓を生かし、今そこにある尖閣危機への対応を一段と強化することが求められる。