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静岡大教授で文化人類学者・楊海英(55)(26)母語に危機…文革は続いている

静岡大教授で文化人類学者の楊海英さん(大野正利撮影)
静岡大教授で文化人類学者の楊海英さん(大野正利撮影)

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《今年6月、中国の全国人民代表大会で「香港国家安全維持法」(国安法)が成立し、香港への中国政府の直接介入が可能となった。その後、民主化運動の粛清が続いている》

現在の香港をみると、「文化大革命(文革)がまだ中国とその周辺で続いているな」と思います。文革は1976年の毛沢東の死によって終わったとされています。確かにその後、しばらくは沈静化し、中国共産党指導部や人民たちに反省もあったでしょう。しかし最近の中国共産党には文革の政治手法や発想、思想が色濃く出てきました。国家主席の習近平が、文革を進めた毛沢東を信奉しているからでしょう。

確かに中国中央部では文革は終わったかもしれませんが、内モンゴルと新疆ウイグル、チベットではずっと続いていました。少数民族を弾圧し、文化を否定し、漢人との同化を強制するのは文革と同じやり方です。それが北京を中心に同心円状に広がっていき、香港ものみ込まれた。2014年の香港民主化運動「雨傘運動」のとき、人民解放軍の将校が「香港は台湾よりもたちが悪い」と語っていましたが、中国共産党にとって香港は1949年に中華人民共和国ができたときに知識人や資本家らが逃げ込み、89年の天安門事件のときは民主化運動の学生たちを救ったという恨みがあります。歴史の復讐(ふくしゅう)といえるようなことが今、香港で行われているのです。

《内モンゴル自治区では現在、教育現場でのモンゴル語から中国語への変更が進められている》

9月から、小学校と中学校の国語で、モンゴル語ではなく中国語の教科書を使うことになりました。来年以降は道徳や歴史の授業も中国語になるとし、将来は「モンゴル語」という科目を残してすべての授業が中国語になる、と聞きました。私は当初、理数系の教科でモンゴル語から中国語に変更すると聞いており、そのとき政府は「理数系は中国語でないと教えられない」と説明していました。しかし、コンピューターのモンゴル語ソフトは80年代からあり、モンゴル語でも十分、理数系は学べます。この根拠のないごり押しも文革時代と同じです。