大牟田豪雨災害あす2カ月 ポンプ場水没で被害に拍車 構造、位置に問題 後手に回った防災対策

水没した三川ポンプ場。応急処置として土のう袋が積まれていた=福岡県大牟田市
水没した三川ポンプ場。応急処置として土のう袋が積まれていた=福岡県大牟田市

 大規模冠水が発生し、2人が犠牲になるなどした福岡県大牟田市の豪雨災害から6日で2カ月。内水氾濫によって半壊家屋は市街地を中心に1200件超に上るが、特に市南部のみなと校区では、排水機能を担うポンプ場そのものが水没したため被害が拡大。11万都市の弱点を露呈した格好だ。大牟田の豪雨災害が残した教訓を探った。(九州総局 永尾和夫)

 ■配電盤に浸水

 7月6日午後1時48分、大雨警報(浸水害)が発表され、大牟田市南部のみなと小学校では、258人の児童の保護者へ下校の連絡をした。ところが豪雨はさらに強まり、午後8時には自主避難所にもなっていた同小に児童30人と保護者ら80人が避難。しかし浸水拡大のため孤立状態に陥った。

 結局、児童22人が小学校2階で一夜を過ごすことになった。校外の水深は1・5メートル、校舎内でも濁流が押し寄せた。この水害で1階が使用不能となった。馬籠秀典校長は「1階部分の復旧見通しは立っていない」という。

 みなと校区の浸水家屋は床上千件、床下1500件にも及び、逃げ遅れた80歳代の2人が自宅で亡くなった。

 みなと校区は、福岡県管理の諏訪川左岸にあり、付近にはかつて三池炭鉱の最主力坑として知られる三川坑があった。周辺より地盤が低いことから浸水対策として昭和38年、ディーゼルエンジンポンプ3台を備えた「三川ポンプ場」を設置。その後、9台の電動水中ポンプを増設して、水害発生時には合計12台のポンプが稼働していた。

 ところが、頼みの排水ポンプが機能しなくなるという事態が起きた。

 市の住民説明資料によると、午後8時15分、ポンプ場の配電盤付近まで浸水が進み、ショートを避けるため、水中ポンプの運転を停止。同30分には、ディーゼルエンジンにも浸水したため停止。その後、排水設備は全て水没した。

 このため、国土交通省のポンプ車や民間の応援を得て、ようやく浸水が解消されたのは8日午後零時半のこと。ポンプ場機能停止から40時間後のことだった。これによって浸水被害は拡大した。

 ■災害原因を検証へ

 市内の1時間当たり降雨量は6日午後3時に67ミリ、同4時95ミリ、同5時90ミリで、3時間で250ミリを超える集中豪雨だった。市は「1日で1カ月分の雨量をはるかに上回る豪雨で、観測史上最大だった」と強調する。

 三川ポンプ場を管理する市企業局によると、現状では12台分の排水能力は1時間降量40ミリ程度しかなく、現在の国の基準の64ミリを下回っているという。

 だが、排水能力だけでなく、ポンプ場そのものの構造や位置にも問題が残る。三川ポンプ場は堤防道路とほぼ同じ高さに設けられており、そこに配電盤やエンジンが置かれていた。国土交通省筑後川河川事務所は「ポンプ場は耐水化が最も重要。設備の高さを確保し、しっかり防水する必要がある」と指摘する。

 8月7日に開催されたみなと校区住民への説明会。住民からは「水没前に応援ポンプ車の要請ができなかったのか」「ポンプ設備の水没は想定できなかったのか」という声が上がった。

 これに対し、市は応急措置として今後、施設への浸水を防ぐコンクリートブロック塀を設置し、電気設備を高い位置に配置すると説明。新しいポンプ場を、隣接する樋口公園に建設する方針も明らかにしたが、防災対策が後手に回ってしまったことは否めない。

 関好孝市長は、豪雨災害の原因を究明する「7月豪雨災害検証委員会」を設置した。防災や河川工学、下水道などの専門家5人で構成し、12月までに検証結果を関市長に提言する。住民組織「みなと校区運営協議会」も検証結果を待つ構えだ。

 ■突出する半壊家屋

 消防庁の8月末現在の集計では、熊本県の全壊は217件、半壊は458件、大分県は全壊63件、半壊は181件。これに対し大牟田市は全壊は11件だが、半壊が1218件と突出して多く、一部損壊も1122件あった。

 11万都市の豪雨災害。被害は農地、道路など全域に及ぶが、住宅の浸水は市街地のJR鹿児島線西側に集中した。市内に三つの川が流れる大牟田市は明治以降、炭鉱開発とともに急速に発展した。市中心部にはかつて沼地だった地域もあり、JR線沿いに5つのポンプ場が設けられている。

 今月3日現在、仮住まいを強いられている被災者は167世帯336人。市や被災者への支援金も1億780万円が寄せられ、市は被災者支援など約76億円の災害対策費を9月議会に提案した。市庁舎には「がんばろう 大牟田」の懸垂幕も掛けられ、復興・復旧に向け本格始動する。

 気象庁によると、1時間雨量50ミリ以上が国内で降った回数は昨年までの10年間の年平均では327回、それ以前の10年間に比べ4割増加した。「観測史上初」の集中豪雨がいつ、どこで起きるか分からない異常気象の時代だ。現在、非常に強い台風10号が九州に接近しているが、どこへどう避難するか確認しておくなどなどソフト面の充実で命を守ることが大切だ。

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