地方公共団体のほとんどは、国から交付される普通交付税で財源不足を補い、一定の行政サービスを提供している。一方で、交付を受けていない裕福な団体もわずかながらある。新潟県では聖籠(せいろう)町が令和2年度まで37年連続、刈羽(かりわ)村が30年連続で不交付団体になっている。それぞれのフトコロ事情をのぞいてみた。(本田賢一)
充実の子育て施策
全国の都道府県と市区町村(特別区を除く)の合計は1765。2年度の不交付団体は76団体で、全体のわずか4%ほどだ。
その一つ、新潟市の北部と隣接する聖籠町は、海岸地帯に国内最大級の火力発電所、東北電力東新潟火力発電所(最大出力の合計481万キロワット)や、石油備蓄基地、液化天然ガスの受け入れ基地、大手企業の工場などが集積し、これらが安定財源になっている。人口は約1万4千人。
今年度の一般会計予算の歳入は約72億円。発電所を中心とした固定資産税が約32億円、法人町民税が約3億5千万円で、この2つで歳入のほぼ半分を占める。
そんな同町は子育て施策が手厚いことで知られる。出産した住民に誕生祝い金として第一子~第三子まで各5万円、第四子以降には各10万円を支給している。さらに第四子以降の子供がいる家庭には、末っ子が小学校に就学するまで月額5千円の子育て支援金を支給している。
驚くのは保育料の安さ。3歳から小学校就学前の幼児を保育する町立こども園(幼稚園)が3施設あり、通常保育(平日の午前8時半~午後3時)は無料だ。保育時間は通常保育も含め6つのパターンから選べるようになっており、最長の午前7時半~午後7時でも月2500円の保育料ですむ。土曜も安く一時預かりを行っている。
小学校では今年度から外国人講師による英語の授業をスタート。また、IT時代の人材を育成するため、小学生を対象にプログラミング教室も実施している。
町総合政策課の高橋誠司課長は「子育てがしやすいということで、若い人が聖籠町に引っ越してくる」と説明する。
こうした施策が奏功してか、町の出生率(人口1千人当たりの出生数)は平成29年時点で9・5人。県内30市町村で断トツのトップで、県平均の6・6人を大きく上回っている。人口流入率(人口1千人当たりの15歳以上の流入人口)も592人で断トツのトップ。県平均が約95人だからその多さがわかる。