紀伊半島豪雨9年 夫亡くした女性、紙芝居で経験伝える

 自らの被災体験を1枚1枚描き、翌年5月ごろに完成させた。その後も、少しずつ場面を増やし、現在では30枚ほどに。その中には幸せに暮らしていた被災前の自宅も含まれており、久保さんは「家族だんらんを思い出して、描いているときは涙が出そうでした」と明かす。

 「家族と何十年も過ごした土地を離れたくなかった」と、今も同じ地区で暮らす久保さんの防災士としての活動は町内が中心だ。これまで小中学校や老人会など約60カ所で紙芝居を上演し、参加者からは「絵で見ると分かりやすい」「自分が体験したように思える」などの声が届く。「『かわいそう』ではなく、『自分も早く避難しなければ』と思ってもらえるようにしなければ」と話し方なども工夫しているという。

 今年はコロナ禍が活動に影を落とし、予定していた上演が中止になることもあるが、各地で自然災害が相次いでいるだけに、久保さんは「災害はいつでも、どこでも起こり得る。早めの避難が一番大切。『自分の住む地域は大丈夫』と思ってはいけない」と強調。豪雨被害の記憶の風化が進み、自身も年齢を重ねているが、「少なくとも100回は上演したい」と防災への思いを新たにしている。

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