紀伊半島豪雨9年 夫亡くした女性、紙芝居で経験伝える

 久保さんは当時、平屋建ての自宅に夫と長女の3人で暮らしていた。9月3日に台風12号が高知県に上陸し、紀伊半島は記録的豪雨に見舞われた。久保さん一家は自宅にいたが、4日未明、突然状況は一変した。 「水が来た!」。長女が叫んだ直後、あっという間に濁流が胸の高さまで押し寄せた。久保さんは逃げる際に約100メートル流されたが、道路脇の柵をつかんで九死に一生を得た。長女も屋根の上に逃げて助かったが、夫の二郎(にろう)さん=当時(69)=は帰らぬ人となった。久保さんは「ここまでひどい水害が起こるなんて、誰も思っていなかった」と振り返る。

 被災後、なんとか生活を建て直しながら、転機が訪れたのは26年1月。地域の防災力向上に関わる防災士の女性が、新聞紙を使った簡易トイレの作り方を紹介する姿を見て「自分の体験を生かせる防災士になりたい」と決意した。独学を重ねて、その年に見事合格。「幅広い世代にわかりやすく被害の実態を伝えよう」と紙芝居の活用を思いついた。

会員限定記事会員サービス詳細