主張

首相の退陣表明 速やかに自民党総裁選を 「安倍政治」を発射台にせよ

 202年ぶりの譲位による天皇陛下の御代(みよ)替わりを支えた。デフレ脱却を掲げてアベノミクスを打ち出し、雇用改善につなげた。社会保障財源を確保するため、政治的に困難な消費税率引き上げを2度にわたって行った。

 働き抜いた首相だが、達成できなかった重要課題もある。

 「歴史的使命」と語ってきた憲法改正は、衆参両院で多くの改憲勢力を擁しても改正案の発議ができなかった。極めて残念だ。

 ≪憲法改正は実現できず≫

 北朝鮮による日本人拉致被害者の全員帰国を「最重要課題」としてきたが解決のめどは立っていない。北朝鮮の核・ミサイル戦力は深刻な脅威のままである。

 戦没者に慰霊の誠を尽くす靖国神社参拝は長期政権にあっても平成25年の一度限りだった。

 プーチン露大統領との良好な関係に基づき、平和条約締結を含む北方領土問題の解決を目指したが大きな進展は得られなかった。

 コロナ禍という国難は続いている。自ら招致に尽力した東京五輪・パラリンピックの行方も見通せない。

 いずれも、次の政権に引き継がれるべき課題である。

 安倍首相が政権終盤ではっきり示せなかったのが、対中融和政策の見直しである。中国政府は、香港や新疆ウイグル自治区で弾圧を繰り返し、南シナ海では人工島の軍事化など「力による現状変更」を目指している。東シナ海では日本固有の領土である尖閣諸島(沖縄県)を奪おうとしている。

 米国などは、全体主義中国の覇権志向を抑えようと動き出している。日本は弾圧の責任者である習近平国家主席の国賓来日の招請を取り消していない。

 自民党総裁選に立候補する政治家は、「安倍政治」の成果と方向性を尊重することが望ましい。

 コロナ禍に伴う経済的苦境からいかに脱し、成長軌道へと戻すのか。米中対決を基調とする現下の国際情勢にどのような姿勢で臨むのか。これに対して、はっきりとした政見を示す必要がある。

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