それでも前へ コロナ禍

茨城・大子の魅力発信し続けたい NPO法人「まちの研究室」事務局長 斎藤真理子さん

真剣な表情で今後のイベントの在り方に思いを巡らせる斎藤真理子さん=大子町
真剣な表情で今後のイベントの在り方に思いを巡らせる斎藤真理子さん=大子町

 茨城県北のJR水郡線・常陸大子駅にほど近い商店街の一角。元写真館の建物に入居するのが「まちの研究室」だ。ユニークな名のNPO法人は同県大子町の街作りや地域おこしを主な目的に平成26年、設立された。

 同町では以前から地元を盛り上げるためのイベントがたくさん行われていた。「こうしてがんばる人たちを横につなぐ組織の必要性が高まり、まちの研究室は生まれた」と事務局長の斎藤真理子さん(34)は説明する。

 本業は商店主や農家などさまざま。年代も30代から70代と幅広いNPO法人の会員が主催する催しに関するアドバイスや、許可申請など事務処理面でのサポートが研究室の業務となる。

 毎年秋に行われる「奥久慈大子まつり」も研究室がかかわる大きなイベントだ。地元グルメや雑貨が販売され、ステージではライブも開催。県内外から1万人近くが集まるが、昨年10月13日に予定された第28回目のまつりは台風19号の来襲を前に中止された。

 台風は県内へ大きな爪痕を残し、大子町も久慈川の氾濫などで広範囲に浸水。水郡線は鉄橋の流出で不通となるといった被害に見舞われた。「ちょうど紅葉が始まり、リンゴ狩りは最盛期を迎えたところだった」と斎藤さん。秋の行楽シーズンが厳しい結果に終わった地域にとって、今年は巻き返しの1年となるはず、だった。

 ところが、年が明けると新型コロナウイルスの感染が拡大。約1千体のひな人形を飾る「百段階段でひなまつり」(2月29日)、「常陸国YOSAKOI祭り」(5月16、17日)、「花火大会と灯籠流し」(8月14日)といった人気イベントは次々と中止や延期へと追い込まれた。

 町は台風と新型コロナのダブルパンチを受けた形となり、商店街や飲食店、タクシーやバス会社、宿泊施設などあらゆる業種が深刻なダメージを受けている。

 研究室としても手をこまねいてはいられない。昨年台風で中止となった奥久慈大子まつりは、オンラインによる特産品の販売やライブ配信といった形での実施を検討。「他のイベントも規模を縮小したり、数日に分けて開催したりといった工夫で密集を避けられるようにすれば…。失敗を恐れるより、新しい挑戦をしたい」と前を向く。

 生まれ育った大子の魅力を「商店街でおばあちゃんと茶飲み話ができたり、誰にでも小学生が元気にあいさつしたり。昔のままの風景が残っている」と語る。「この町をいつまでも残したい」との思いで日々奮闘を続ける。(三浦馨)

 ■さいとう・まりこ 昭和61年、大子町生まれ。大学卒業後、飲食チェーン勤務を経てUターン。学習塾で働きながら町内で毎年秋に開催される人気イベント「丘の上のマルシェ」を手伝ったのがきっかけで「まちの研究室」発足に関わり、初代事務局長に。趣味は食べ歩き。幼いころからの巨人ファンでもある。

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